(21) 0321 三野 赳愛 「現状」

題名「　現状　」

　能登半島地震が起きてから２ヶ月が経った。地震が起きた後、僕がいた場所は孤立状態になった。２週間程そこで過ごした。孤立している時は電気も電波もなく、一気に当たり前ではない生活になった。余震がいつ来るか分からない中で、半壊状態の家の中をひたすら片付け、日が暮れる前の１６時頃に夕食を食べ、食べ終えるとすることがなく１８時には眠りにつく。それを２週間程繰り返してきた。最初、当たり前ではない、限界だ、と思っていた生活は、何日か同じように過ごすと慣れてくるものだった。

　孤立集落から脱出した後、僕は金沢に行くことになった。金沢に行くと何でもない当たり前の平和な生活があった。不思議なことに、いざ当たり前の生活ができるようになると何をすればいいのか分からなかった。２ヶ月経って普通のような生活を送っているが、今もよく分からない。なんなら色んなことがどうでもいいと思うようになった。今は、こんな思いになる現状が早く良くなればいいと思うだけだ。