樒(しきみ)の力
地震から351 日目
豪雨から87 日目
支援金をいただきました
群馬県立沼田高等学校様からです
JRC部のみなさんが募金活動をしてくださいました
ありがとうございました
沼田高校さんは男子校ですが
来年度から近くの女子校といっしょになるのだそうです
楽しみですね
樒(しきみ)という植物があります
四季を通じて常に美しい緑の葉を保つことから
「四季美」転じて「しきみ」となったようです
昔から邪悪なものを寄せつけない力を持つということで
仏閣の敷地内によく植えられています
水を張った花瓶に挿しておいても
1ヶ月も水が腐らない不思議な力を持っています
からだ全体に毒を持っていて
細菌を殺す力があるようです
この毒は「シキミ酸」といって
集めて精製していくと
「オセルタミビル」という物質に変わります
どこか聞いたことのある響きではありませんか
インフルエンザの特効薬です
「タミフル」はこれを主成分とした商品名です
こう考えると
昔の人のいう邪悪なものとは
インフルエンザウイルスだったのでは?
と思うのですがあくまで私見です
年末年始寒い時期に
多くの人が集まる仏閣に
樒を植えておくと
インフルエンザの流行を抑えることができる
そのことを昔の人は
経験的に知っていたのではないでしょうか
きっとこのようにして
経験から学んださまざまなことを
まとめ上げそして伝え合って
今の豊かな生活があるのだと
これも震災をきっかけに
私自身学んだことです
例えば先ほどの樒に含まれるシキミ酸
このシキミ酸だけを取り出して
毒のないように加工して
即効性のある薬を創り出すのが
西洋医学です
一方でその毒を含む植物をそのまま
量を調整しながら服用するのが
東洋医学すなわち漢方です
シキミ酸が毒である以上
それを体内に持つ樒自身にとっても
毒であることに変わりはありません
ではなぜ樒は無事なのか?
シキミ酸から自分自身を守る物質を
樒が持っているからなのです
このことは胃潰瘍の発症の仕組みと同じです
胃はタンパク質つまり食べた肉などを消化する
ペプシンという消化酵素を分泌します
ところが胃自身がタンパク質でできているので
本来なら胃自身も消化されてしまうはずなのです
ではなぜ食べた肉だけ溶けて
胃自身は溶かされないのか
それは胃がペプシンから自分自身を守る
薬を作っているからなのです
ところがストレスにより
その薬を作る力が衰えると
胃は自分自身から出した
肉を溶かすペプシンによって
自分が溶かされてしまいます
それが胃潰瘍です
漢方では
毒と一緒にその毒を解毒する物質も服用するので
効き目が穏やかで副作用がありません
化学の教員として
さまざまな薬の歴史についても
いろいろ学んできました
その中で最も衝撃を受けたのは
サルファ剤の発見の歴史です
サルファ剤は
抗生物質ほど強烈ではありませんが
殺菌作用のある薬品です
染料つまり絵の具のようなもののひとつ(プロントジル)に
どうやら殺菌作用のようなものがあるぞ
ということが当時の研究者たちの間で
知られていました
そんな時細菌学者ドーマクの娘が
細菌に冒され医者からサジを投げられます
ドーマクはプロントジルを娘に投与する
決心をするのです
全ての治療法が効果なく
死にゆく娘であるとはいえ
絵の具を飲ませる
彼の心の中はどんなだったでしょう
ほどなくプロントジルを投与された娘は完治し
このことが元となってサルファ剤が
開発されたのでした