石川県教員総合研修センター 所長 あいさつ

令和6年10月10日

子供が主体的に活動する授業のために

所長 杉中 達夫

  先日、私の小学校5年時の担任であったO先生から手紙とともにご自身の過去の研究物が郵送で届きました。O先生は昭和55年4月から6年間、石川県教育センター(現石川県教員総合研修センター)で勤務されており、現在勤務している私に参考になればと送っていただいたのです。
 その中の一つに、昭和61年3月発行の教育センター研究紀要29号があり、当時のO研修指導主事が中心となってまとめられた研究が載っていました。その内容は、小学校算数科の授業における授業者と児童の言語活動を診断・分析することで、授業者が経験年数に見合った授業ができているかを振り返り、授業改善に活かすことを目的としたものでした。その研究の中にこのような記述がありました。

「優れた授業には、教師あるいは教材の働きかけに対して、必ず児童の自主的で活発な応答、討論がある。
しかし、こうした授業は一朝一夕に成しえるものではない。児童が主体的に活動する授業、あるいは、児童の主
体性や課題解決への意欲や能力の育まれた学習集団の形成といった、授業を成立させる支柱は、教師自らが
厳しく自己を評価し不断の習練によって体得すべき方法・技術である。」

 現在、国による「令和の日本型学校教育」の構築を目指し、個別最適な学びと協働的な学びを一体的に充実し「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善が求められており、どのような授業形態や単元構成で実施するかを多くの学校関係者が試行錯誤しています。

 今回、恩師からいただいた貴重な資料を拝読し、少なくとも40年以上前からすでに本県の教師は、子供たちが主体的に活動する授業を目指して絶え間なく努力を続けてきていることに大変感動を覚えました。

 また、そのためには課題解決への意欲や能力の育まれた学習集団をつくり上げることが肝要であることが記されていました。これからの授業が子供を主語にし、学びを子供に委ねていくことを目指すならば、子供の主体性は欠かせないものであり、教師が深い教材研究に裏打ちされた教材観を身に付け、子供たち個々の学習状況を精緻に見取り、それに応じた授業準備を行うこと、そして意識を高く持って学び合うことのできる学習集団を日々育んでいくことが必要であると改めて認識した次第です。

 教員総合研修センターの職員も皆さんと共に学び続けています。授業が「教科等の資質能力の向上につながっているか」「一人一人の子供たちにとって有意義な学びであるか」を視点として、学校や教師の「やってみよう、試してみよう」を後押ししていきたいと考えています。