日誌

「わたしにできること」

ハチドリのひとしずく

           辻 信一

森が燃えていました

森の 生きものたちは、われ先にとにげて いきました。

でもクリキンディという名の

ハチドリだけは、行ったり来たり。

口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは、

火の上に落していきます。

動物たちがそれを見て、

「そんなことをして、いったい何になるんだ」

と言って笑います。

クリキンディはこう、答えました

「わたしは、わたしにできることをしているだけ。」

          出典・「ハチドリのひとしずく」 光文社刊

 

これは南アメリカの先住民(=インディオ)に伝わるお話です。環境問題を考える際によく使われたお話です。また、2011年3月11日に東北地方の太平洋側を中心に東日本大震災が起こった後は、道徳の授業でもよく使われました。ハチドリというのはその種類によって差はありますが、体長5~10cm、体重2g~20gという非常に小さい鳥です。ハチはその名の通り“蜂(はち)”を表し、花の蜜を主食とします。話しを戻しましょう。クリキンディという名の小さなハチドリは、大きな森が燃え広がろうとする中で、他の生き物たちに笑われても、大切な森を守ろうと、自分が出来る「一滴ずつ水を運ぶ」ことを繰り返します。

さて、今、世界中が、新型コロナウイルス感染症が広がることを防ぐために、様々な我慢をしています。「早く何とかしなければならない」と感じながら、でも「自分一人では何も出来ない」と自信をなくしてしまっている人も少なくないでしょう。そんな時だからこそ、このお話しのクリキンディの姿や言葉に込められた思いを考えてみて欲しいと思います。「自分の力は小さいかもしれないけど、まずは自分が出来ることをしよう」という前向きな気持ちや勇気を持って欲しいと思います。

 ・手洗いやうがい、部屋の空気の入れ換えをこまめにすること。

 ・家族のために、自分が出来るお手伝いを見つけてやること。

 ・学校が休みでも規則正しい生活をして、自分の健康を守ること。

 ・時間をかけてじっくりと本を読んでみること。

 ・兄弟姉妹の手助けをすること。

 ・ニュースや新聞を見て、世の中で何が起こっているのかを知ること。

考えてみれば、その人によって、「自分が出来ること」はいろいろとあるのではないでしょうか?そして、そのことが、自分の不安をなくしたり、休校が終わって、また学校に登校できるようになった時、友だちと協力して生活できる力を強くしてくれたりします。『STAY HOME = スティホーム』が求められますが、家の中でも、自分に出来ることはたくさんあります。今こそ、『鳳至っ子』の頼もしさを見せるときです。

            学校長 山 岸 茂 樹