文芸部
【文芸部】2023年度の活動
①俳句甲子園出場(8月) ※上記はそのメンバー
②高文連文芸部主催「文芸作品コンクール」審査結果
【俳句部門】
《優秀》(県一位相当)
マウンドの雨の光や小鳥来る 山野(22H)
塾帰り単語言ひ合ふ星月夜 鍛治(21H)
《優良》(県六位相当)
黒板は日露戦争小鳥来る 砂本(23H)
マネージャー両手にバケツトマトかな 野路(14H)
【短歌部門】
《優秀》(県一位相当)
雑草の青く息づく祖母の庭まだ羽のないバッタの跳ねる 山野(22H)
三色の毬それぞれに針を刺す不揃ひなれど三代の毬 鍛治(21H)
《優良》(県八位相当)
味オンチの母の夕餉の思い出は骨多かりきハチメなりけり 砂本(23H)
シャー芯を出しては戻す君の癖そのシャーペンの芯になりたし 野路(14H)
【文芸部】令和四年度「文芸作品コンクール」
令和四年十月十三日(木)、千代女の里俳句館において、高文連文芸部主催「文芸作品コンクール」の審査があり、その結果が発表されました。本校からは、俳句部門で三名、短歌部門で一名が、《優秀》賞を受賞しました。以下が、その仔細です。
【俳句部門】《優秀》
エチュードを隻手で鳴らす良夜かな 米口(2年)
渚にて繋ぐ手湿る良夜かな 鈴木(3年)
仕舞屋の錆びた自転車草いきれ 國雲(3年)
【短歌部門】《優秀》
日の暮れし群青色の空の下切子の木組み芯から燃ゆる 水野(3年)
【文芸部】 八年ぶりに「俳句甲子園」出場
本校文芸部は創部七十年目を迎え、新聞部やロボット部、アニ研等々と、通称「文サ連長屋」で共生しています。俳句甲子園に関しては、今回久しぶりに、本大会出場をゲットしました。
例年ならば、部員全員が八月のお盆明けに、愛媛県松山市において大々的に開催される大会に、参加の運びとなるのですが、昨年に引き続き、この六月現在において、コロナの終息がまだ見込まれない現状を鑑み、今年度は全国大会出場32チームがさらなる投句審査で、上位4チームに絞られ、その全4チームが直近松山市に集うことが可能な場合のみ、そこで準決勝・決勝戦が実施という按配に、余儀なく変更された次第です。
今年度は、八年ぶり八回目の出場ということで、末広がりで縁起も宣しく、かつての先輩方の好成績を凌駕することを目標に精進してきました。全員が文芸部所属とはいえ、片足はロボット、アニメ、合唱、弓道部など、かなり浮気な混成チームです。
という訳で、本大会に提出する作品の、前段階を一部披露します。兼題は、《片蔭》《清水》《空蝉》《茄子》。これ位なら、簡単に作れるという方は、奮って文芸部までご来室の程を。とはいえ、これはあくまで草稿であり、提出作品は、ここから二段階ほどギアをアップしてゆく予定です。
《片蔭》
片蔭に置きっぱなしの缶一つ
片蔭や拾ってやりたいキーホルダー
片蔭やベンチの端に缶二つ
片蔭のコーラを強請る小学生
片蔭や白いベンチに老夫婦
片蔭やスマホに映るツーショット
片蔭の好きなバンドの赤Tシャツ
片蔭に電話ボックスを見ぬ猫や
片蔭やコーラの空き缶今置かる
片蔭や明日には忘れるこの余談
「ところで」ではじまる長い片蔭や
折り紙で片蔭つくり虫が棲む
片蔭や君と約束待ち合わせ
片蔭や黒板の隅傘さして
片蔭や嬉しアイスの部活動
片蔭を辿り助けて捕まった
片蔭の落書き過去を遡る
片蔭と濡れた地面が混ざりけり
片蔭や忍者となりぬ女学生
片蔭に隠れて逃げた五秒間
片蔭や鬼から逃げる五秒間
片蔭で尻尾を切った蜥蜴かな
片蔭や拾うハンカチ赤刺繍
片蔭や道草を食う散歩道
片蔭やスマホの中の「山月記」
片蔭の魔物と目が合うミラー越し
片蔭や白く浮き出ている「止まれ」
片蔭のチャリこぐ僧侶や有名人
片蔭でHow are you ?と聞くCD
片蔭に生ゆる涼しさ追う人々
片蔭に人肌を知るしみ二つ
片蔭にしなびてまいる麦藁帽子
片蔭に集う涼しさ追いかける熱
《清水》
石ころが靴に入りし石清水
早朝に離婚届を清水へと
ドローンが進んだ先の石清水
草船を早く運べよ岩清水
苔清水山を切り分け街を分け
苔清水不眠の我の血流や
NHK清水放送暑い脳
鮮やかに友禅泳ぐ清水かな
苔清水蟹が行ったり来たりする
清水越え秘密基地へと続く道
アカペラや木草揺れ打つ山清水
笹の葉に願いを乗せて清水かな
初めての彼の言い訳山清水
清水越え振り返る君通り雨
清水へ落ちゆく紙飛行機よ
月明り旅館に流れる清水かな
苔清水兼六園に隠れけり
グランドの泥がとけでる清水かな
靴下と清水の中で泳ぐ靴
予期もせぬ清水が胸まで迫るとは
シャツの白灰染めにし苔清水
山頭火分け入って飲む真清水よ
こんこんとピークハントに清水かな
ふと見れば茹だる暑さに岩清水
朝霧も巻き込み流る苔清水
空の中流る流るる山清水
真清水一瞬のみの地上の世
散策で清水発見一休み
《空蝉》
空蝉を従兄弟の肩に何気なく
空蝉や埃被った室外機
空蝉を彼女に渡し未読スルー
空蝉を拾いし祖父の墓参り
空蝉や西日が差した子供部屋
空蝉を見つめてみようか暑い夜
空蝉が目にとまる日ととまらぬ日
空蝉や乾いて光るもの、からだ
空蝉や五時のチャイムを身に通す
空蝉や部活のない日の授業中
空蝉やミッケ!で誇る弟よ
空蝉を透かしべっこう飴のよう
空蝉を揚げて塩ふりゃおやつかな
空蝉に砂糖絡めた琥珀かな
いたずらに落ちた空蝉夜明け前
青い屋根とまる空蝉白い羽
体重を預けた幹の空蝉や
空蝉や宝箱開ける合言葉
空蝉やノストラダムスの大予言
県庁の壁と同化する空蝉
三つ四つと数えて捨てる空の蝉
連れていくアリの葬列空蝉を
東京のオフィスの外の空の蝉
喫茶店メロンソーダ空蝉入り
空蝉や落ちゆく未来を見下ろしけり
空蝉や赤雲たなびく公園で
空っぽで人目に付かぬ空蝉よ
空蝉や若々しくも燃ゆる葉よ
音もなくぽつんと残る空蝉よ
《茄子》
茄子丼を拒む子供に怒鳴る母
茄子だったあいつは今は精霊馬
茄子すらも那須与一は射貫くのか
飲み干したラムネの瓶に茄子の花
長茄子や直売店の老夫婦
あんよの短い猫にじゃれる茄子
白米と茄子の漬物ばあちゃんち
茄子貰い焼き揚げびたし茹で炒め
ふるさとのヘタ紫なす過去の味
毎朝の水やり茄子と待ち望む
茄子漬けや初めて覚ゆ祖母の味
エアコンをつけない祖母の茄子素麺
黄昏れたメトロノームや茄子の花
へべれけの父と向き合う茄子煮込み
揚げ出した茄子の艶めき喧嘩後
茄子の紺夕雲の間を差す紫
畑の中彩り添える茄子の花
茄子食べた三百六十五日前
茄子紺と僕の痣を笑う君
木になると思って植えた茄子の種
串刺して茄子見立てるはチョコバナナ
妹の引っ越し荷物の中の茄子
紫紺の茄子寝ぼけ眼に映えにけり
壺の中不老となりて光る茄子
畑の中残り取られぬ茄子の棘
朝飯前戸端に茄子の積まれけり
茄子の花紫紺の宙に浮かびけり