校長先生のブログ

「子どもは子どもの中で育つ」

    いよいよ分散登校が始まりました。分散登校初日から1年生の女の子が走って登校してくれました。「おはようございます。早いね。」と私が声をかけると、彼女は「はい」。「久しぶりにお友達に会えるからうれしいのかな?」と尋ねると「はい」とより一層大きな声で返事を返してくれました。 

1ヶ月ぶりに子どもたちの元気のよい声が戻ってきました。やはり、子どもたちの声は学校に活気を与え、そして私たち職員に元気、やる気を与えてくれます。まるで魔法のような存在です。子どもっていいですね。 

   週末はだれもがステイホームを心掛けていたと思います。私は家の片づけに没頭しました。いらなくなった衣類や靴、書籍などを整理して断捨離です。そんな時、一冊の文集を発見。それは私が教えたバレー部員が作成した文集です。片づけそっちのけで、その文集に読みふけってしまいました。

   20年程前のことを思い出したのです。平成11年のことです。当時の私は門前中女子バレー部の顧問をしていました。平成11年度の新入部員は9名。その中で一人ダウン症の生徒が入ってきました。名前は「さおり」。何かあっても責任をとれないと思った顧問の私は、一端入部を断ったにもかかわらず、どうしてもという両親の強い思いに押され、入部を許可しました。

    予想どおり、体力のないさおりはみんなと同じ練習についていけるはずはありません。みんなが10周走っても、彼女は3周ほどしか走れません。「仕方ないな」と思っているのは顧問だけで、そんな時はチームのみんなが彼女が10周走り終わるまで一緒に走ってくれるのです。また、コートに固まって動かない時もよくありました。そんな時は、コートで固まってはいけない理由をきちんと彼女に伝え、それでも言うことを聞かない時は、引きずってでもコートから出し、再度コートは練習するところだと教えていました。サーブはほとんど入りません。そんな時もサーブを打つ位置を前にすることを教え、さおりに自信を持たせる工夫をしてくれました。

    このようにさおりに対して厳しさの中にも思いやりのある行動を一人ひとりが率先してとってくれるようになり、いつのまにかさおりを中心としてチームがまとまり、3年生の県体予選前には、「点差をつけてさおりを試合に出場させること」がチームの目標となったのです。そして大会当日、23-16でリードをし、いよいよさおりがピンチサーバーとして出場する場面がやって来ました。30本打って1本入るか、入らないかのサーブがなんとネット手前で落ち、サーブポイントを決め24-16に。そして奇跡は二度起きました。次のサーブもネット近くで落ち、ボールはダイレクトに自分たちのコートへ。そのチャンスを逃さずダイレクトで打ち返し2点目が入りました。25-16で勝利したのです。ビデオを撮っていたお母さんは手が震えて撮影できなかったと後で教えてくれました。

    輪島市の吉岡邦男前教育長がよく話されていた「子どもは子どもの中で育つ」の言葉が思い出され、その意味の深さを改めて思い出す機会となりました。

    今、社会では「多様性」が求めれています。学校には、いろんな子ども達がいて、一人ひとり違った考えを持っています。授業では、自分とは違う意見も受け入れながら、自分の意見を広めたり深めたりする活動を取り入れています。こうすることで、自然と多様性を認め、それを受け入れる人間になれると考えます。他人の意見や思いを柔軟に受け止められる幅広い人間になってもらいたい、「みんな違ってみんないい」と、互いの良さを認め合える学校づくりに努力してまいります。今後ともご支援・ご協力をお願いいたします。

                                                                                                                                    学校長 松山 真由美