日誌

お祝い 第64回 卒業証書授与式

 穏やかな春の陽気に包まれた、令和5年3月1日(水)午前10時より「第64回卒業証書授与式」が挙行されました。

 今年の卒業生は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等で入学当初から苦労の多い学年でしたが、立派に成長した姿を見せてくれました。

 卒業生を代表して「31H  村中  英紀さん」が答辞を読み上げ、学校生活での思い出やお世話になった方々への感謝の気持ちなどを伝えました。卒業生たちは来賓、保護者の方々、教職員に見守られながら学び舎を巣立って行きました。

        卒業生入場          卒業証書授与

      卒業証書授与(呼名)    送辞(22H  福井 美乃)

            答辞(31H 村中 英紀)


卒業式 式辞

 弥生三月が間近となった先週、思いがけない雪に見舞われました。冬という季節が、あたかも去って行くのを惜しむかのような、「名残の雪」と呼ぶにふさわしい雪でしたが、今は、風の一吹きごとに、春の息吹を確実に感じとることができます。厳しい冬がどれだけ長く続こうとも、春は必ずやってきます。

 本日ここに、ご来賓のかたがたのご臨席、また、たくさんの保護者の皆さまがたのご列席を賜り、第64回卒業証書授与式をこのように盛大に挙行できますことは、本校職員一同にとって大きな喜びとするところです。

 保護者の皆さま、本日は誠におめでとうございます。お子様が、高校卒業という大きな節目を迎えられましたこと、心よりお祝い申し上げます。ときに悩み、揺れ動く思春期のお子様にそっと寄り添い、あるときには叱咤激励し、支え続けてくださった三年間に敬意を表します。またその間、本校の教育活動に対し多くのご理解とご協力を頂戴いたしました。重ねて御礼申し上げます。

 ただいま卒業証書を授与いたしました273名の皆さん、おめでとうございます。本校の教育課程を修了し、未来へ向かって新たな一歩を踏み出す皆さんを、心から祝福いたします。

 皆さんは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による臨時休校のさなかに、本校に入学されました。約二か月に及んだ臨時休校期間が明けてもしばらくの間は部活動もなく、生徒全員で集う学校行事もなく、期待していた高校生活はいったいどこへ行ってしまったのかと、鬱々と過ごすときもあったことでしょう。

 今年の5月8日をもって新型コロナウイルス感染症がインフルエンザ並みの五類に指定変更されることを考えると、皆さんの高校生活は、まさに新型コロナウイルスに振り回されたと言っても過言ではないと思います。

 しかし、こうも言えると思います。であるからこそ、皆さんはしみじみと実感したはずだと。今まで当たり前と思って享受してきた日常のさまざまなことがらが、実はとても貴重なものであったと。そのように皆さんは気づいたはずです。

 有難い、という言葉は、漢字では、「そこにあることが難しい」と書きます。当たり前の日常の有難さに気づくということを、皆さんは高校生という多感なこの時期に経験しました。これからの皆さんの、人生という長い道のりを考えたとき、この経験は、必ずその実りを豊かにしてくれるものとなるでしょう。なぜなら、過去には多くの場合、このような経験は、人が歳を重ね、もはや人生をやり直すことなど不可能となってから、やっと失ったものの価値に気づき後悔する、しかし後悔したところで遅すぎる、といった状況で語られてきたからです。

 あれもできなかった、これもできなかったと嘆き、誰かにその怒りや不満をぶつけるのは簡単です。しかし、ないものや失ったものごとを嘆くよりも、今あるものに感謝し、それをどう活かすかを考えたほうが遥かに豊かなときを過ごすことができるはずです。

 ここ2~3百年ほどの歴史を振り返ってみると、「時代を切り拓いてきた」とされる人には、共通する特性が少なくとも三つはあるように思われます。それは、不遇の時代にあっても「今は苦しいがいつかは終わる」と考えることができる、ある種の楽観主義者であること。不遇の時代を雌伏の時ととらえ次の機会のために自分の力を蓄えようとする長期的な視点を持っていること。そして何かを成し遂げようとする意志の強さです。

 自分を取り巻く状況に絶望することなく、自分の力でどうにもならないことは心静かに受け止める。そして自分の努力次第で変えられることについては「自分はこうしたい。どうやったら実現できるか」と工夫を重ね続け、周囲を巻き込み突き進む。このような人がそれぞれの分野で新しい時代を築きあげてきました。

 社会に出れば、理不尽としか思えないことに直面することも少なくないでしょう。残念なことではありますが、この世の中には自分の力ではどうしても変えられない環境や状況というものが確かに存在します。それをどのように受け止め、自らの行動に反映させるのか。それを決めるのは誰でもない、皆さん自身です。全ては、皆さんの心の持ちようにかかっています。

 皆さんは金商での三年間、制限があるなかで精一杯充実したときを過ごすための努力や工夫を惜しみませんでした。そんな皆さんの姿を、この一年間ずっと見てきました。だから皆さんなら大丈夫。どんなときも、その時々の仲間と共に、未来をしなやかに切り拓いていってくれると信じています。

 名残は尽きませんが、お別れのときが近づいてきました。本校の特色ある授業を通して培ってきた素養や地域とのつながりをこれからも大切にし、あとに続く後輩たちが、人生の先達と慕い、目標とする存在となるべく、今後も力を尽くしてご活躍されることを祈念し、式辞といたします。 

          

                 令和5年3月1日

                 石川県立金沢商業高等学校長  山崎しのぶ