ジュニア美術館   感動のるつぼ
 河井小学校の校内には、卒業生が制作してきた”輪島塗沈金パネルによる卒業作品”があちらこちらに展示されています。その様は、さながらジュニア美術館です。一部の作品は市体育館サン・アリーナの壁面にも飾られています。平成24年度で32作目を数えるようになりました。この作品作りは、どんなきっかけから始まったのでしょうか。
 
 実は、これは一人の教師の強い願いから始められました。当時の6年担任だった谷内先生(元校長)が、出張で愛知県瀬戸市を訪問なされました。焼き物の町らしく学校の玄関の壁には児童の陶芸作品が飾られていました。その素晴らしさにひきつけられ、輪島には輪島塗という伝統産業があるのだから、その技術を生かした作品作りをやろうと決心されたのです。
 これを快く推進くれたのが、当時の大向PTA会長と保護者でもあった角氏でした。
 
 このプロジェクトを実行するに当たりいくつもの壁がありました。「うるし」はかぶれやすいこと、高度の技術をどう教えるか、指導はだれがするのか、費用は、かかる時間は、等々です。かぶれに関しては予想に反し、子どもたちにほとんど影響がありませんでした。加飾の方法として版画の手法に近い沈金技法が採用されました。
 
 様々な苦労の末、第1作「わらい」が完成しました。その時の様子を、大向氏は次のように述懐しています。
 
  第1作「わらい」
 
 『私が河井小学校のPTA会長であった頃、卒業制作パネルを最初に提案した。その時、沈金師の角伊三郎さんにご協力をいただいたが、作業を進める上で一番感動されたのが角さん自身だった。顔をだんだん紅潮させ、「こんなに素晴らしい子どもたちがたくさんいることに感動する」と言われた。校長室で作品を乾かすことになったが、それが終わっても児童はだれ一人として帰らなかった。そして、角さんに握手を求めた。校長室が感動のるつぼになった。「学ぼうとする力」を与える原点は、ここにあったのではないかと思う。』
 
 この輪島塗沈金パネルによる卒業制作が今日まで継続されてきたのは、児童の学ぶ熱意と保護者の理解、そして、何よりも沈金の極意を丁寧に指導してこられた輪島塗職人の方々のお力によると思います。
 
 
 * 児童の作品は、「卒業制作」のメニューでご覧になれます。