~各式典より~

平成29年10月2日(月)校長訓話

 10月に入りました。

 もう皆さんも気がついていることと思いますが、前庭にたくさんのプランタが置かれています。植えてあるのはサクラソウという花の苗です。

 春に全校生徒で植えた花が枯れてしまったあと、9月になってから全部のプランタの土を外に出し、そこへ石灰やもみがらを混ぜ、陽に当て土に栄養をつけ、そしてあらためてプランタに入れ、そこへ234の苗を一つ一つ丁寧に植えたものです。

 この作業、すべて学務員の加藤さんが一人でやってくれました。

 私は加藤さんに聞きました。どうしてサクラソウを植えようと思ったんですかと。加藤さんは「今植えると、うまくいけばちょうど卒業式や入学式にサクラソウがきれいに咲く、そうすればみんなが喜んでくれるかなと思って」と答えてくれました。

 これまでそこには何もなかったわけですから、なければないでそんなもんでしょう。でもみんなが喜んでくれるかなと、誰にも頼まれていないことをコツコツとされている。私たち以上に、半年先の卒業式や入学式のことを考えてくれているんです。

 ありがたいですね。まさに喜びの種をまく、ということですね。

 9月の校長訓話で、時間は確実に過ぎ、物事はやがて終わりを迎える。自分にどんな結果を出したいのか、どんな終わり方をしたいのか、よくよく考えて、精一杯の準備をしてほしいとお願いしました。

 加藤さんが来春のことを思い、サクラソウの世話をされている。

 私たち一人一人が将来につながることを地道にやり始めること、そのことをあらためて教えられた気がします。

 10月のスタートを機に、元気を出してやっていきましょう。

平成29年9月5日(火)校長訓話

 先週金、土の二日間にわたる鶴翔祭ご苦労様でした。

 まず生徒会役員の皆さん、準備も大変だったと思いますし、当日もいろいろあったと思いますが、無事終えることができたのは皆さんのおかげです。ありがとうございました。

 そして一年生から三年生の皆さん、クラスや部単位での催し、ステージ、模擬店、展示、掲示等々、また表には出ないところで準備や片づけを手伝ってくれた生徒もいます。最後の舟岡古調、学生歌、校歌の締めくくりもとても良かったと思います。ありがとうございました。

 さて、最近私は何かが終わるたびに「ああ終わったなあ」と思うこと、そういう思いが強くなっていることを自分自身で感じています。毎日、仕事が終わって家に帰り、「ああ一日が終わったなあ」と一人で思うわけです。鶴翔祭が終わった夜も「ああ今年の鶴翔祭も終わったなあ」としみじみ思っていました。

 物事は一つ一つ終わっていくということ、物事には必ず終わりがあるということ、そういうことをつくづく思うようになってきたわけです。

 「一期一会」ということばを聞いたことがあると思いますが、これは茶道に由来することばで、お茶を点てる人、お茶を受ける人ともに互いに誠意を尽くす心構えを説いたものだと聞いています。「あなたとこうしているこの時間は二度とやってこないかもしれない。だから誠心誠意準備をし、この時間を大切にしたい」ということだと私は理解しています。

 私はこの「一期一会」の心構えは何も茶道、あるいは人と人との関係だけではなくて、すべてにおいて大切なんだろうと思っています。

 たとえば、皆さんと鶴翔祭も同じです。三年生にはもう鶴翔祭はありません。二度と来ない。だからこそ時間のない中、一生懸命に準備したんだろうと思います。「一期一会」の心構えがあったということですね。

 これからやってくる就職・進学の試験、部活動での大会、中間・期末考査、それらすべて、やがてその日がやってきて、そして終わっていく。

 このことを深く自覚して、どんな結果を出したいのか、どんな終わり方をしたいのか、よくよく考え、精一杯の準備をしてほしいと思います。中途半端な準備は何にもなりません。後悔を生むだけです。限られた時間、本気でやることが大切だと思います。

 「一期一会」の心構え、一つ一つが最後なんだ、同じことは二度ない。そういう気持ちで取り組んでください。

 また、今日から切り替えてやっていきましょう。

平成29年5月9日(火)校長訓話

 こうして全校生徒が勢ぞろいするのは今日が初めてです。このメンバーで、ここにいる生徒と先生で、平成29年度の一年間をやっていくんだと、今この壇上に立ってあらためてそういう気持ちになっています。

 新年度になってちょうど一ヶ月。一年生は学校に少し慣れたでしょうか。二、三年生は始業式でお願いした「自分がどこに向かって一歩を進めるか」定めることができたでしょうか。

 さて、この連休中にあった出来事を一つ話します。
 
 一階の生徒ラウンジにある自動販売機、その前にある大きなゴミ箱がいくつもあることは皆さんも知っていると思います。5月4日に私が学校に来たとき、このゴミ箱がどれも満杯になっていました。私は「あとで捨てなければ」と思っていたのですが、そのことをすっかり忘れて帰ってしまいました。

 そして昨日、学校に来てそのことを思い出し見に行くと、どのゴミ箱もきれいになっていました。私は自分が忘れて帰ってしまったことを「恥ずかしいなあ」と思いながら、「誰がしてくれたんだろう」と考えましたが、先生なのか生徒なのかまったくわかりません。でも、してくれた人がこの学校にいることは間違いないので、ありがたいことだなと思いました。そして、こうした人の見ていないところで人のために働けることをみんなで見習わなければならないとも思いました。

 最後に。今日から中間考査一週間前です。そのあとに県総体、県総文も控えています。皆さんにとって大切なことが続き、どれもおろそかにできません。切り替えをしっかりとしながらやっていくことが大切だと思います。
 
 頑張ってください。

平成29年4月10日 入学式 式辞より

 新入生の皆さん、今皆さんはこの鶴来高校で何をしようと思っているのでしょうか。進学や就職向けて頑張りたい。部活動に燃えたい。苦手な勉強を少しでもわかりたい。そのために学び直しをしたい。人と上手くつきあえるようになりたい。そんないろいろな思いを持っていると思います。ぜひその思いを実現させてください。
 さて、こうした自分の思いを実現させるときに必要なことは何か。それは、まず今の自分ができることをきちんとやっていくことだろうと思います。そんなことは当たり前だと思うかもしれませんがそう簡単なことではありません。
 「小さい勇気こそ」という東井義雄さんの詩があります。
 
 人生の大嵐がやってきたとき それがへっちゃらでのりこえられるような
 大きい勇気もほしいにはほしいが わたしには小さい勇気こそほしい
 わたしのたいせつな仕事を後回しにさせ 忘れさせようとする小さい悪魔が
 テレビのスリルドラマや漫画に化けて私を誘惑するとき
 すぐそれをやっつけられるくらいの 小さい勇気でいいから
 わたしはそれがほしい
 もう五分くらい寝ていたっていいじゃないか けさは寒いんだよと
 あたたかい寝床の中にひそみこんで わたしにささやきかける小さい悪魔を
 すぐやっつけてしまえるくらいの小さい勇気こそほしい
  (中略)
 紙くずが落ちているのを見つけたときは 気がつかなかったというふりをして
 さっさと行っちまえよ 風ひきの鼻紙かもしれないよ
 不潔じゃないかと呼びかける小さい悪魔を すぐやっつけてしまえるくらいの
 小さい勇気こそわたしはほしい
 どんな苦難ものりきれる 大きい勇気もほしいにはほしいが
 毎日小出しにして使える小さい勇気でいいから それがわたしはたくさんほしい
  (後略)

 新入生の皆さん、皆さんもこの「小さい勇気」をたくさんほしいと思ったことはありませんか。自分の思いを実現しようとするには、慌てなくても、焦らなくてもいい。ただ、日々の生活の中で小さい勇気を絞り出して、今の自分ができることを一つ一つやり続ける。そして思うようにできなかったときも、そこでやめてしまわないこと。気持ちを立て直して小さい勇気を出しながら、またやり始めることが大切なんだと思います。そうすれば、少しずつ少しずつ自分が思う自分に近づいていけるはずです。3年間チャレンジしてください。 

平成29年3月2日 卒業式 式辞より

 この1年間、私は皆さんが最上級生として、本当に良く頑張ってくれている姿をたくさん見させてもらいました。その中から、私にとってうれしく、そして皆さんには決して忘れて欲しくないと思ったことを話します。
 皆さん、今年度の鶴翔祭のテーマを覚えているでしょうか。「鶴高魂」でした。魂とは精神、心です。すなわち「鶴高生の心意気を示そう」というテーマでした。私はまず、この「鶴高魂」というこんな言葉が生徒諸君から出てきたこと、それがとてもうれしかった。なぜなら、皆さんの心の中に、「自分たちだってやれる。自分たちだってやって来たんだ」という鶴高生としての自信や誇りがなければ「鶴高魂」という言葉は絶対に出てくるはずがないからです。皆さんの中にそれが芽生えていることがうれしかったんです。鶴翔祭は、このテーマのとおり3年生の見事なリーダーシップのもと全校生徒で鶴高らしさを発揮してくれました。
 もうひとつ。
 4月24日、金沢市民球場で行われた野球部の試合。相手は40名を超える部員を持つ強豪校。試合は本校が序盤に3点をリードしていましたが、8回に追いつかれ延長戦に突入。10回表に本校が1点を取り、これを守り切り勝利しました。ピッチャー3年風君が柔らかなフォームで一球一球丁寧に丁寧に投げ続ける。野手は集中力を保ち懸命に守る。ここだというときに3年吉田君が執念のタイムリーを放つ。最後は風君から引き継いだ3年北田君が堂々と抑える。選手一人一人に華やかさや、強烈な強さはなかったかもしれませんが、助け合いながら粘り抜く逞しさが本校のチームにはありました。お互いが信頼で結ばれているすばらしいチームであり、戦いぶりだったと思います。
 卒業生の皆さん、これから皆さんが進む道は順風満帆ということは決してありません。いろいろなことがあって当然です。しかし、もし心が折れそうなときがあっても、「鶴高魂」である「自分だってやれる。自分だってやって来たんだ」というプライド、そして野球部にみた「仲間と助け合いながら、しなやかに粘り抜く逞しさ」。この2つを忘れないでください。そうすれば、たとえ時間はかかったとしても目の前の壁を一つj一つ乗り越えていけるはずです。
 皆さんがこれからも着実に成長し、一社会人として自立していくことを私たちは期待し願っています。