日誌

6年生のみなさん ご卒業おめでとうございます(卒業式式辞)

平成二十九年四月五日に、この体育館で入学の呼名を受けてから卒業証書を手にした今日まで、数えること、実に二千百七十三日。一日一日を確実に積み上げ、無事、小学校の教育課程を修了された三十四名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。

卒業生のみなさん、私がこの鳳至小学校に赴任したのは、皆さんが三生の学習を始めるころでした。今となってしまえば、『黒歴史』と言えますが、わずかの間とはいえ、学ぶルールがおろそかになってしまった時期がありました。教室を落ち着かせるため、保護者のみなさんに授業入っていただきもしました。それでも、自分たちのあるべき姿を見つめ直し、それを一つ一つ行動に表していくようになると、2学期には集団のルールを意識した生活を取り戻すことができました。四年生の運動会のころには、下の学年の手本となれるよう努力を惜しまない集団になりました。五年生になり、学校の代表としての活動が増えると、アイディアの豊富さや気配りの良さといった皆さんの長所が様々な場面で発揮されるようになりました。中でも、それぞれの学年が戸惑うことなく感謝の気持ちを伝えることができた「六年生を送る会」の運営は見事なものでした。

そして、最上級生となった今年度。四月六日の入学式準備以降、どの場面を切り取ってみても、頼もしく、そして甲斐甲斐しく、学校のために力を尽くすみなさんの姿を思い出すことができます。

三年ぶりに行われた輪島市民祭りでは、マリンタウンでの発表の前に学校から漁協までパレードをし、マリンタウンでの発表が終わったら、今度は新橋通から学校までをパレードしました。途中、休憩や待ち時間を挟みはしますが、この行程は昨年の倍の六時間に及ぶものであり、体力的にもメンタルの面でも、キツくなることが予想されました。しかし、当日は、終始、ハツラツとしたパフォーマンスを見せてくれる皆さんの姿がありました。演奏はもちろんのこと、手足の上げ下げや位置にまで気を配ったドリルや行進は、見る者を感動させてくれました。休み時間や放課後も使って自主練するなど、ひたむきに金管鼓隊に取り組む六年生の意識の高さ、よりよい発表にするためのアイディアを出し合い、質を高めていこうとする六年生の粘り強さがあったからこその感動でした。

運動会では、EXダンスと応援合戦の見直しを手がけてもらいました。元気さや躍動感を引き出すために採用したEXダンスでは、六年生が率先して声出すことで、運動会のスタートから活気に満ちた雰囲気をつくることができました。応援合戦では、しばらく途絶えていた、六年生応援団のメンバーが、演じるパフォーマンスの内容を考え下級生に指導するという、良き伝統を復活させてくれました。それぞれの団が一体となり、意気込みや相手との違いをアピールしようと工夫を凝らす様子は、観る者の心を楽しく、そして、熱くしてくれました。運動会全体で見ても児童全員が楽しむことができる一日にしたいという六年生の想いの強さに引っ張られ、どの学年もその良さを表現した競技や演技ばかりでした。六年生ってすごいなと心の底から思いました。

活躍は行事ばかりではありません。今年度は石川県道徳教育推進事業の研究発表会が本校で開かれ、輪島市内を中心に多くの先生方が皆さんの授業の様子を見ていかれました。その先生方が共通して話されたのが、皆さんの話し合う雰囲気の良さと、内容の深さです。コミュニケーション力という言葉がよく使われます。これは単に自分の思いを述べることだけではありません。言葉だけでなくその様子にも注意を払い、相手の思いを読み取ろうとすることまでをも求めています。皆さんが授業中に見せるコミュニケーション力の高さは特筆すべき素晴らしさです。学校でも、皆さんの発言の仕方やグループでの話し合いの姿を、下級生の学びの中にも取り入れようと学習参観を行いました。参観後の下級生からは、自分たちの授業に取り入れたいポイントがたくさん挙げられています。

 私が知る4年間だけでも、ものすごく成長しているのがわかります。そして、この1年、素晴らしい活躍だったと振り返ることができます。では、皆さんが成長し活躍できたその要因はどこにあったのでしょうか?

私は皆さんの成長と活躍の背景に、皆さんの持つ“素直さ”と“進取の精神”があると思っています。自分を向上させるためには、自分自身を客観的に捉え、改善のためのアドバイスには素直に耳を傾けようとする態度が必要です。また、自分をレベルアップさせるためには、難しいと思えることでも取り入れ 自分の力に変えようとする“進取の精神”、言い換えれば、チャレンジ精神も必要となります。

卒業生の皆さんは、幾度となく、困難を自分たちの手で乗り切ってきました。そして、そこには、状況を素直に見つめ直し、解決の手がかりがひらめくと、少々ハードルが高くても協力してやりきる姿がありました。皆さんには素直さと強いチャレンジ精神が宿っています。だから、中学校以降の学びでも、勇気をもって前に進んでください。

一方、卒業生のみなさんがその素直さと進取の精神を身につける環境を作ってくれたのは、皆さんのご家族であり、地域の皆様、鳳至の風土、今までに出会った先生方であることも振り返ることができると思います。だからこそ、皆さんを育ててくれたあらゆる人や機会に、感謝を忘れないでください。そして、今度は、皆さん自身の力で、新しくできる友人や家族、仲間が、皆さんとともに成長できる環境を整えていってください

 保護者の皆様、お子様のご卒業、おめでとうございます。凛凛しく健やかに成長されたお子様の姿に、感慨もひとしおのことと存じます。ただ、まだまだ、子どもたちには、皆様のお力添えが必要なことは言うまでもありません。子どもたちが良き社会人となるまで、今後も、見守っていただくことを重ねてお願い申し上げます。

結びに、

人は、『夢』を実現させようと努力を繰り返す中で、『自由』という言葉の本当の意味を知ることになります。そして、『夢』に向かって進もうとすればするほど、「感謝」・「挨拶」・「笑顔」の大切さを学びます。誰かのせいにしたり、出来ない言い訳ばかりならべたところで、「良くなること」は一つもありません。卒業生の皆さん一人一人が、自分自身と社会を誠実に見つめ、解決のための一歩を踏み出せる大人へと成長されることを願いまして、式辞と致します。

  令和五年 三月十七日  輪島市立鳳至小学校  校長 山岸茂樹