日誌

求められる『読解力』とその向上を目指すために

10月17日(月)、児童による自治活動のリーダーとなる各委員長の任命式並びに学級委員の後期任命式がありました。また、21日(金)に行われた全校集会では、それぞれの学年が後期の学級目標を発表しました。“後期”という言葉が記されることでもわかるように、2022年度の教育活動も後半を迎えたことになります。それと同時に、子どもたちには、次の学年への進級・進学を意識した“準備”の取組が増えてきました。次のステージへの準備として、どうしても欠かすことが出来ないのが『学力』面での準備です。現学年で勉強してきた教科の学習は理解できているのか。学年が上がり内容が難しくなっても、対応できるか…。

鳳至小学校では学校として教師側がよりよい授業づくりについて研究を重ねるとともに、確かな学力を身につけるための基盤として、子どもたちの『聴く』姿勢づくりと『読解力』を養う取組をすすめてきました。

『読解力』。字面で見れば「読んで(その意味を)理解す力」となりますが、では、どこまでの理解が要求されるのでしょう。文部科学省から出されている読解力向上プログラムには次のように定義されています。

読解力 : 自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に

      社会に参加するために、書かれているテキスト(=文章)を理解

      し、利用し、熟考する力。

ならば、この「理解し、利用し、熟考する力」というのはどの程度のことを示すのでしょう。先日、4年生が算数科で以下のような「がい数(概数)=おおよその数、だいたいの数」を用いた見積もり方の違いを考える問題に取り組みました。これを例に、具体的に求められる「読解力」について考えて見ます。

①  【お兄さん】

ノート、コンパス、マーカーペンを買いたい。お金は1000円しか持っていない。

 ノート   : 値段は145円 → 200円(がい数)として計算

 コンパス  : 値段は290円 → 300円(がい数)として計算

 マーカーペン: 値段は428円 → 500円(がい数)として計算

             ↓

※実際の値段を切り上げした「がい数」にして、見積もりをした。

②  【お母さん】

歯みがき、せんざい、リンスを買いたい。1000円以上買えば駐車料金が無料になる。

 歯みがき  : 値段は246円 → 200円(がい数)として計算

 せんざい  : 値段は375円 → 300円(がい数)として計算

 リンス   : 値段は518円 → 500円(がい数)として計算

             ↓

※実際の値段を切り下げした「がい数」にして、見積もりをした。

①お兄さんは1000円しかもっていないから合計金額が1000円を超えては困る。だから、切り上げをした『がい数』(=実際より高い値段)を用いて見積もりをすることで、合計金額が1000円を超えないことを確かめた。

②お母さんは買い物の合計金額が1000円以上になれば駐車料金が無料になるので、切り下げをした『がい数』(=実際より低い値段)を用いて見積もりをすることで、合計金額が1000円以上になることを確かめた。

①②より、目的に合わせて見積もりをだすために「四捨五入」「切り上げ」「切り捨て」を使い分けているということに気づき、それを説明(表現)することができるということが、この授業のねらい(到達目標)でした。言い換えると、合計代金が「1000円を超えていない」・「1000円以上になる」ことを確かめるために「四捨五入」「切り上げ」「切り捨て」を使い分けたことを読み取り、それを適切に表現することまでを求めています。この問題で子どもたちは、①ではお兄さんが切り上げによる「がい数」を用いて見積もりをしたこと、②のお母さんが切り下げによる「がい数」を用いて見積もりをしたことまではほぼ全員が理解していました。しかし、「1000円を超えない・超えるを確かめるために切り上げ・切り捨てを使い分けている」ことを明確に表現できている子どもは多くはありませんでした。ここまで読んで、算数というより、国語の問題のようだとは感じませんか。そうなんです。算数といっても、国語的な要素は大きいのです。なぜ、お兄さんは切り上げた「がい数」で見積もりをしたのか?なぜ、お母さんは切り下げた「がい数」で見積もりをしたのか?「1000円を超えないこと」「1000円以上になること」を確かめるためにという理由の部分が抜けてしまうのです。お兄さんが切り上げをした「がい数」を用いた意図、お母さんが切り下げをした「がい数」を用いた意図までを読み取っていない(気付かない)ので到達してほしい目標に達しないという状況です。論理的に考えるという点で見れば算数かもしれませんが、国語力が問われる課題です。国語的な文章を読み取る力がないと正答には辿り着かないのです。学校では『読解力』の向上を図るため、授業等で行っている「声に出して読む」、「線を引きながら読む」、「言葉の意味を問い返す」、「図・表・グラフの等の資料を関連づけて自分の考えを作る」、「朝読書」、「短作文」等の活動を注意深く継続しながら①文章や図・表・グラフの意味を正しく理解する力、②作者の意図を読み取ったり要約したりする力、③読みとったこと・考えたことを表現する力を伸ばしていきたいと考えます。また、読解力を高めることにより、今後、子ども達が中学校、高校、大学、実社会…と、ステージアップすればするほど必要となる自主学習力(=自分で学ぼうとする力)も高めていくことができればと考えます。一方、『読解力』の向上には、日々の『読書』の積み重ねの効果が大きいことは言うまでもありません。時節柄、“読書の秋”という言葉も言われます。ご家庭でも読書についてご指導いただけたら幸いです。ご理解とご協力をお願いします。             学校長  山 岸  茂 樹