日誌

『認め合い、尊敬し合い、協力し合って生活していく』態度の育成

2022年もあと数日で終わろうとしています。今年はコロナ問題を引きずりながらも、北京冬季オリンピック・パラリンピックで活躍する日本選手団の奮闘に一喜一憂したスタートでした。しかし、その感動も冷め切らない2月24日、ロシア軍がウクライナ侵攻を始めたときは、第3次世界大戦に拡大しないかと不安になりました。ロシア軍による侵攻は、かろうじて拡大こそしていませんが、未だに解決の兆しが見えないため不安は消えません。また、ウクライナもロシアも食料やエネルギー資源の輸出国であり、その価格の高騰が世界の経済や金融を混乱させていることも心配です。一方、11月に入ってカタールで開催されたFIFAワールドカップでは日本、韓国、オーストラリアのアジア勢3国の決勝トーナメントベスト16に進出や、モロッコやチュニジア、カメルーンのアフリカ勢によるジャイアントキリングなど、おおいに盛り上がりました。特に日本はワールドカップで優勝も経験しているドイツやスペインといった強国に勝っての進出であることに加え、試合後の選手・森保監督をはじめとするスタッフやサポーターのマナーの良さが世界各国のメディアから称賛されたことで、清々しい気持ちになりました。ただ、ドイツに勝った時には、“ドーハの歓喜”とはやし立てて選手や監督を褒め讃え、コスタリカ戦で敗れたときには聴くに堪えないような言葉も用いて酷評し、スペインに勝った時にはまた、選手や監督を持ち上げる。その様子を揶揄する『掌返し(てのひらがえし)』という言葉もはやりましたが、コスタリカに負けたときには、“批判”というレベルではなく、“誹謗中傷”としかとれないコメントが数多く拡散され、一生懸命にプレーしている選手や監督が気の毒で、残念な気持ちになりました。

 閑話休題。12月10日は「世界人権デー(Human Rights Day)」に定められています。日本でも、その日を最終日とする1週間を人権週間と定め、全国的に人権啓発活動を強化する取組がすすめられています。近代的な人権の考え方が芽生えたのは17世紀後半のイギリスであり、1789年のフランス人権宣言を経て、19世紀から20世紀前半にかけて欧米で人権宣言を含む憲法をつくる国がでてきました。しかし、実際は、それらの憲法でも、人権はその国の一部の人々の権利を保障するものでしかありませんでした。それを証明するかのように、自国民の生き残りのために他国に戦争をしかけたり宗教的解釈のズレから国内の少数民族を虐殺したりと、20世紀半ばになっても人権は踏みにじられ、多くの人々の命が奪われました。第二次世界大戦後、国際連合が結成される中、そこに参加した各国の代表が、人権の侵害を放置したことが虐殺や戦争につながったことを認め、世界の平和と安全を守るためにも各国が協力して人権を守る努力をしなければならないとして、1948年12月10日に国際連合の総会で『世界人権宣言』が採択されました。以上が「世界人権デー」の由来です。

先述したロシア軍によるウクライナ侵攻は、ウクライナの人々に対するプーチン政権による重大な人権侵害行為です。また、ロシア兵にしてみても自分の生きる権利を危険にさらして戦っており、人権が侵害されてることは変わりません。サッカーでみられた“誹謗中傷”も選手や監督にとっては謂われのない人権侵害です。

 鳳至小学校では、各クラスで人権について考えてもらう際に、次のような話をしました。

世の中に、自分と全く同じ人はいません。似ているところはあっても、似ているだけで同じではありません。「自分と違う相手のことをまず認める」ことから人とのつきあいは始まります。自分と違うから相手を嫌いになったり攻撃したりするのではなく、その自分とは違う相手と、「どうしたら楽しく遊ぶことができるか」「どうしたら力を合わせることができるか」「どうしたら、協力して解決することができるか」を考えることが大切です。これは人類が一生、取り組んでいかなくてはならない課題(=テーマ)です。鳳至小学校の生活目標は、『自分がされて嫌なことは、人にしない。言わない』ですね。実はこの生活目標を守ることが人権を守る第一歩です。友達に意地悪をして困らせたり、自分より小さかったり弱かったりする人をいじめたり、相手がどう思うかも考えずに、大したことではないと勝手に判断して友達の遊びを邪魔したりすることは人権を守らない行動です。自分が困った・いじめられたという立場になったら、どんな気持ちになるのか。そこを考えて行動しましょう。人間(私たち)は、認め合い、尊敬し合い、協力し合って生活していくのです。

子ども達は、これから変化の激しい社会を生き抜いていかなくてはなりません。変化の中では、様々な人々との共生やチームワークが求められます。そのためには『認め合い、尊敬し合い、協力し合って生活していく』態度は不可欠です。子ども達には、“人生100年時代”をたくましく、しなやかに生き抜いていくことができるよう、今後も学校生活の中で『認め合い、尊敬し合い、協力し合って生活していく』ことについて考える場面や機会を増やしていきます。

 さて、4月からの毎日の学習や委員会活動、運動会等の行事を振り返ると、児童それぞれが成長に欠かせない経験を積む中で、達成感や充実感を深めることができた9ヶ月間でした。そして、その成就感は、子ども達の努力はもちろんのこと、実は、地域や保護者の方々のお力添えがあったからこそ、作り上げることができたものです。改めて皆様のご協力とご支援に感謝申し上げます。ありがとうございました。

来る2023年も、この良き地に育つ鳳至小の子ども達が、さらにその可能性を拡げられるよう、職員が一丸となってサポートすることをお誓いして、年末のご挨拶とさせていただきます。

         学校長 山 岸  茂 樹