「ありがとう」~ある生徒の心温まる行い~

 11月下旬、学校に一通の葉書が届きました。今回はこの葉書にまつわるお話しをしたくてペンを取りました。

 11月18日朝の登校時間に、ある先生から「本校の生徒がおばあちゃんを抱きかかえていた」という報告をもらい、自転車で登校途中に接触したのかもしれないと思い、大急ぎで現場に向かいました。すると、向こうの方から本校生徒と小松商業高校の生徒に両脇を抱えられ歩いてくるおばあちゃんの姿を見つけました。聞くと、歩道を歩いていたおばあちゃんが転んでしまい、ふらつきがあったので、心配したその二人の生徒が自分の自転車をその場に置いて、自宅までおばあちゃんを送り届けようとしている、というのです。おばあちゃんの額には大きなコブができていて、意識ははっきりしているものの、足下はおぼつきませんでした。程なく、心配して探していた家族の方が見つけてくださり、おばあちゃんは無事に車で帰っていきました。

 この二人の男子生徒。なんと優しい、勇気のある行動でしょうか。自転車を置いて家まで連れて行こうとすれば、確実に自分は学校に遅刻してしまいます。それでも、全てを承知して、困っている人を助けようと決断し行動する、なかなかできることではありません。人と人とのつながりが薄らいでいると言われている今日において、この男子生徒の行動は「人とはどうあるべきか」を改めて考えさせてくれた出来事でした。勉強ができる、運動ができる、テストの点数が良い、賞を受賞する、大きな大会で勝利したり有名大学へ進学したりするなど、高校生に関わる「良い点」はたくさんありますが、ひょっとしたら特記事項にも書く機会が与えられないようなこのような善行は、人としては「最高賞」に値すると思うのです。

 せめてこの葉書を渡したいと思い、該当の生徒は名乗り出て欲しいと伝えましたが、とうとう名乗り出ませんでした。この場をお借りして葉書の内容を伝えたいと思います。(一部省略します)

 「小松市立高校 男子生徒様 11月18日の朝、八幡付近で転んで立ち上がれなくなった母を助けて頂きました。生徒様のお名前も分からず、別の方から教えて頂いたのでお顔もちらっとしか見られず、御礼も言えなかったので、このような形をとらせて頂きました。母は認知症で朝一人で出掛けてしまい、心配して捜しておりました。事故にも遭わず無事だったのも生徒様皆様のお陰です。本当にありがとうございました。私の長女の後輩の生徒様に親切にして頂いて、大変うれしく思いました。ありがとうございました。」

 私からも敬意を込めて、「ありがとう」を伝えたいと思います。