廃棄果皮0システム(事例)

2019年5月の記事一覧

「廃棄果皮0システム」構築までの経緯

○平成23年

平成23年、金沢ゆず生産者から「搾汁後のゆず果皮の廃棄に困っている。捨ててしまう果皮の再利用が出来ないだろうか?」と依頼を受け、搾汁後果皮(廃棄果皮)から金沢ゆずマーマレードを開発・販売し、生産者に喜ばれました。



○平成25年

平成25年、廃棄果皮から、ゆずピール煮(砂糖煮)を開発しました。ゆずピール煮を製菓材料として、クッキー・シフォンケーキ・パウンドケーキ・マフィン・パンを開発しました。「金沢ゆずクッキー」はコンテストで奨励賞を受賞。

各商品は地域イベントを始め、常設売り場で常時販売しており、平成29年8月までにマーマレード1,373個、クッキー2,898個、シフォンケーキ1,536個、パウンドケーキ734個、マフィン644個、パン339個の合計7,524個を販売してきました。



○平成29年度

平成29年4月、金沢ゆず生産者の田中さんが来校し「金沢ゆずをブランド化して地元を盛り上げたい。第1回ゆず香るん祭りを開催したいので、出店してほしい。」と依頼を受けました。さらに話を聞くと、金沢ゆずは現在、搾汁後果皮の50(4,650kg)が1kg90円で食品加工業者に販売されているが、残りの50(食べられる果皮30%、汚れなどで食べられない果皮20)は引き取り手がなく、廃棄しているとのことでした。そこで私達は、廃棄果皮を使った6次産業化を生産者に提案し、廃棄果皮ゼロを目指しました。

―きれいな果皮の利用―

お菓子のピール煮をJA金沢市金沢柚子部会にスイーツでの6次産業化を提案し、本校でゆずパウンドケーキの講習会を実施しました。しかし製造技術が難しく、ゆずパウンドケーキでの6次産業化は出来ませんでした。しかし講習会の際に、製菓材料として使用していたゆずピール煮に興味を持ち、「製菓材料としてではなく、そのままお菓子として食べたい」という意見があったため、お菓子のピール煮をJA金沢市金沢柚子部会とともに開発しました。

ピール煮での6次産業化を再度提案し、ゆずピール煮講習会を田中さんが製造免許を取得している自宅ガレージで実施したところ「これなら自分たちでも製造ができる」とピール煮での6次産業化を行うことが決定しました。


―汚れの多い果皮の利用―

汚れの多い果皮は食用には適さないため、なにか利用法がないかと考えたところ、ゆず果皮の油胞組織は香気成分D-リモネンを主体とする精油成分を含んでおりオイルの抽出が可能であると考えられ、アロマオイル抽出試験を行いました。オイル抽出装置(蒸気蒸留法)を自分たちで組み立て、何度も抽出試験を行いました。アロマデザイナーの市井さんにもアドバイスをいただき、アロマオイルの抽出に成功しました。金沢工業大学谷田先生の協力により、私達の抽出したオイルにD-リモネンが含まれていることが確認できました。抽出したオイルは市井さんに高い評価を受け、市井さんが東京で経営する会社「AromaGift(アロマギフト)」との共同開発品として「金沢ゆずキャンドル」「金沢ゆず石鹸」の商品化ができました。

アロマオイル抽出後の残渣は、地元企業の明和工業()に委託して炭化し、畑に還元することで循環型農業にもつながると考えました。成分分析を行ったところ、窒素1.9%・リン0.8%・カリウム2.8%を含んでいることがわかりました(大和環境分析センター調べ)。このことを生産者に提案すると、「ぜひゆず園に撒きたい」と散布しました。



○平成30年

この一連の流れを生産者が行うことにより、生産者の利益向上や知名度向上につながると考えた私達は、「廃棄果皮0システム」と名付け、システム化しました。このシステムは廃棄果皮が出る柑橘類産地ならどこでも導入可能なので、現在は廃棄果皮0システムを全国の産地へと発信するため、普及活動を行っています。