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【教職員リレーブログ】「旅行」について

ずいぶん昔のことになりますが、中国西安市の大学で日本語教師をしていたことがあります。

当時の私の月給は600元程度。現地の人たちの給与はおそらく100元程度だったと思います。でも600元は当時のレートで日本円に換算するとわずか2万円ほどにしかなりません。

その頃の中国には、外国人料金というものがあり、観光地の入場料、ホテル宿泊料金、列車、飛行機などの運賃が、現地人料金よりはるかに高額で設定されていました。駅や空港に行くと、購入窓口が二カ所。中国人窓口の方は、いつも長蛇の列で、割り込みが普通。もたもたしているとどんどん抜かされます。

ところが、中国人民のために働いている私は、外国人窓口に行き、「パスポート」と「工作証」(身分証明書)を見せると、中国人価格、さらに教員割引まであり、なんと普通の中国人より安く、簡単にチケットを購入できてしまうのでした。

というわけで、「とにかく中国国内を旅行しよう」というのが私たち外国籍教師の合い言葉でした。

いろんなところに行きましたが、今思い返して、一番思い出に残っているのは「新疆ウィグル自治区」への旅です。

まずは西安駅から汽車に乗り「敦煌(とんこう)」へ。莫高窟(ばくこうくつ)という、仏教壁画や仏像が残る洞窟で有名ですが、私の記憶によみがえるのは、砂漠の中を疾走していた野生のラクダの群。

そして「ウルムチ」へ。ここは、漢民族が多い大都会でした。印象は薄め。

その後「トルファン」という少数民族ウィグル族のオアシス都市へ。

人々の顔つきも衣服も、話している言葉も、書かれている文字もそれまでのどの町とも違っていました。

西遊記に出てくる「火焔山」や、ロバをひいて人々が集まってくるバザール。ブドウ棚や民族音楽。イスラム寺院から漏れてくる祈りの声。強烈な印象が今も残っています。

「旅行」の本質は日常から離れること。日常との差があればあるほど、ワクワク感が増します。

以前の中国の旅は、移動時間がとてつもなく長く、遅延、欠航当たりまえ。トイレをはじめ、不快なことも数限りなくありました。長期間、一言も日本語を話さないことも。しかし不便も不快もそれが旅。

その一方で、砂漠に登る月、崩れかけた古代の遺跡、数千年眠り続ける美女のミイラ、独特のスパイスの香り、そこで生きる現地の人々の笑顔・・・するとなぜか日本が思い出されてきて涙が出そうになるのです。

若い頃経験した、少し冒険色の濃い旅は、今の私の価値観に強い影響を与えています。

さて、次のお題は、「最近、涙が出そうになったこと」でお願いします。

 西安外国語大学学生                         ウィグルの少年

 ゴビ砂漠