学校日誌

ほりほりの部屋Vol.97「成し遂げずとも、やりとげる~あるスケーターの生き様~」

 皆さん、こんにちは。堀です。立春が過ぎたとはいえ、極寒の日々。さらには、大学受験まっただ中の3年生は言うに及ばず、1・2年生も学年末試験3日目の中盤戦、ということで試練の日々・・・こういう時こそ、「全ては『なりたい自分』のため!」の気持ち、忘れず!学年末試験も、大学入試さえも、所詮は「踏み台」!将来の(小林りょうゆう選手並みの?!)大ジャンプのための下地作り!ぐっと膝を曲げて、耐えろ~~~GATだぁ!!!

 北京五輪も終盤を迎え、悲喜こもごもの結果とともに、秘蔵映像やインタビューなどを通して、選手個々の秘話やら、生い立ちやら、各報道陣からの「裏話」を目に、耳にすることも多くなっています。昨日、あるスケーターが競技後のインタビューで、涙をこらえながら、こんな風に語っていました。「成し遂げることはできなかったけど、やりとげることはできた。そのことを誇りたい。」

「3年生諸君、全員の就職内定および進学内定を取り消します!」もし、3月にこう言われたら、諸君はどう思いますか。なんで???と戸惑ったり、怒りを感じたり、会社や学校を恨んだりすることでしょう。今をさかのぼること、13年前、2009年3月に、実際に就職内定を取り消されたアスリートがいました。当時、国立の信州大学4年生だった女性、名前は小平奈緒といいます。前回の平昌五輪、スピードスケート女子1000メートルで銀メダル、500メートルで金メダルをもぎ取ったあの小平選手です。当時から有名なスケーターだった小平選手はある有名な大企業に1年近く前から就職が内定しており、大学卒業後も練習に集中できることになっていたそうです。しかし当時の日本経済はどん底にあえいでいた頃で、学生はみな就職難。大企業といえども例外ではなかったのです。いったん出した内定を、会社の都合で取り消す、それも3月の卒業直前になって、そんなことが実際に起こっていたのです。スケーターとしての選手生命の危機、それを救ったのが今の所属先、長野県松本市にある相沢病院でした。相沢病院にはスケート部があるわけではなく、所属アスリートは小平選手1人だけ。電車で1時間ほどかかる長野市のスケートリンク「エムウェーブ」を拠点に、大学時代から師事する結城コーチの指導をずっと受けています。相沢病院の相沢理事長さんは、小平選手の就職の件で、知り合いから相談を受けて頭を悩ませていました。当時の人事部長さんからも「アスリートの採用なんて考えたこともない。病院で採用しなければならない理由もない」と反対されたそうです。すると相沢理事長さんは「だけど相手は困ったと言ってる。どうするんだい」と答え、「困っているんだから何とか助けなきゃ」という理由だけで人事部長さんを納得させ、相沢病院は見も知らぬ女子大生を救うことになったそうです。小平選手の就職面接は2009年3月末日、他の同期は4月1日付け入社だったそうですが、彼女だけ4月16日付け入社だったそうです。その後彼女は、初出場だったカナダのバンクーバー五輪で銀メダルを獲得し、帰国後、メダルを持って病棟を回り、病気で動けない患者さんやその家族は、メダリストの訪問を心から喜んだそうです。ちなみに、この相沢病院、ある小説のモデルになったことでも有名です。その小説のタイトルは「神様のカルテ」といいます。こんなお医者さんがいたらいいなあと思わせる、4部作の小説です。嵐の櫻井翔や宮崎あおいが出演する映画にもなり、大ヒットしました。

 話を戻します。小平選手が前回の平昌五輪に行く前、オリンピックへの思いを漢字1文字で表してくださいとのリクエストが報道陣からありました。彼女は、「輪」という漢字を答えました。「応援してくれる人、支えてくれた人、みんな一つの輪、それが私の五輪です」と答え、また、「大学生の頃、全く面識のない人が就職先、つまり居場所を作ってくれた。だから人は、輪のようにつながっていると信じられる」とも語っていました。

 彼女のコトバには、毎回、本当に「言霊(ことだま)」を感じます。身震いします。就職先との輪、家族との輪、指導者との輪、地元との輪、そして、新たに出会う全ての人との輪。例えばこんな5つの輪を大切にし、慈しんでいるんじゃないかなあ、と個人的には感じていました。今回の五輪後、昨夜のコトバにも心動かされました。「(オリンピック連覇やメダル獲得といったことは)成し遂げることはできなかったけど、(最後まで全力で夢を追いかけることを)やり遂げることはできた」。このコトバにこそ、スケーター小平選手の、長い選手生活の最終形、「なりたい自分」が凝縮されているのではないでしょうか。本当の「言霊」には、それを吐いた本人の意図を離れて、言外に、周囲の人々にいろいろ考えさせる力が宿っていると思います。負けた直後の、つらい場面においてさえも、こんなコトバを紡ぎ出せるアスリートはそうそういません。諸君も、こういう生き方しませんか?「成し遂げずとも、やり遂げる」とてもかっこいい生き方だな、と感じた堀でした。(堀も最後まで「やり遂げます」。)

 また、相沢理事長さんの「困っているんだから助けなきゃ」の心があれば、人の輪は自然と広がっていくんだろうな、とも思います。人は、出会った人の数が多ければ多いほど、成長します。諸君も「出会い」を大切にしてください。過去に出会った人も、これから出合う人も。本校の先生方に、こういう方、すっごい密度で存在します!いつも頭が下がります。ありがとうございます、みなさんのおかげで錦はなんとか、もってます。なんだか、いろいろ考えさせられる今日この頃です。ではでは。今日はこの辺で。CU ASAP!