ほりほりの部屋Vol.29「3 tops & 1 bottom~the unforgettable 4 boys<my proud students>~Part1」
皆さん、こんにちは。堀です。4連休、2日間がんばって、また、(生徒諸君は)3連休!ところが来週、中間テスト!!自由時間にこそ、どれくらい「自律」できるかが問われます。「自立」した錦生となるため、社会の求める人材となるため、錦丘高校は、「自立」のための「自律」の機会をこれからも与え続けます。耐えて咲こう!GAT!
‘my proud students’、つまり、「私の自慢の教え子たち」は、医療界・教育界のみならず、様々な、ありとあらゆる職業分野に散らばっています。これからも、諸君の進路(「なりたい自分」)決定プロセスの参考、あるいは、励みになれば、との思いで紹介していきます。今回は、3年生の担任になった当初、学年の偏差値トップだった3人(3 tops)と最下位だった1人(1 bottom)についての第1回。4人とも、1・2年時は全くno touchでした。3年時、4月8日の始業式前の教室で初めて出会った生徒でした。たった1年の関係が、生涯「忘れることができない<unforgettable>生徒」となりました。
35年半、教員を続けてきて、「本物の天才」と言える生徒は、ただ1人。泉の文系の担任の頃、4月最初の個人面談で、「なりたい自分」は何?と問うた時の、「社会派の弁護士です。弱い者の味方になります。なので、京大法学部を志望しています。」柔らかい表情で、しかし、毅然と答えてくれた凜々しい姿は、今でも脳裏に鮮明に蘇ってきます。「ん?社会派の弁護士って、京大出身者ばかりじゃないのでは?東大出身者にもたくさんいるのでは?」「ん~、東大出身者は検事や私利私欲に走る弁護士になってるイメージなんです、僕にとっては。悪徳弁護士みたいな・・・」「それはさすがに偏見じゃないかな~。数字的な根拠でもあるんけ?京大出身者にも悪徳弁護士みたいになってる人、いるんじゃない?」「(キッパリと)いえ。確固たるデータはありません。京大の自由な学風に憧れているんです。あーゆー風土からは利己的な人は生まれないと思います。暖かみがあるというか・・・情け深いというか・・・東大は冷たい感じがして・・・僕には合わないと思います。」面談での進路関係のお話しは大体、こんな感じでした。客観的なreason(根拠)よりも主観的なfeeling(感性)が優先しているような「なりたい自分」への未来予定図、という第一印象でした。
この生徒、家庭学習時間が他を圧倒してダントツに少ない生徒でした。3年生後半になっても1日平均1時間あるかなしか・・・その代わり、読書量が半端なく膨大で広範囲、特に「先生、スタンダールってすごいと思いませんか?」みたいなフランス文学に関する知識が特に豊富でした。なのに!全ての模試での合格判定、京都大学法学部ずっとA判定、しかも、志望者成績全国順位の分子がほとんど「1」!わかりますか?ほとんどの模試において、志願者最高点をたたき出していたのです!塾にも行かず、読書習慣を継続しつつ、1日1時間程度の家庭学習と授業のみで。夏の補習期間も、「先生、母が今度の夏休み、いっしょにイタリア旅行に行かないか、って言ってるんで、補習には出られません。あ、でも野外劇の練習には間に合うように帰国します。大丈夫です。クラスのみんなには迷惑かけませんから。」「は?そこ?」さすがにお口、あんぐり・・・実際、イタリア、行っちゃいました。帰国直後に受けた8月実施の「京大模試」(全国の京大志願者が必ず受けるやつ)、結果は分子「5」。でも、もちろん、A判定。成績表手渡したときの第一声「あ~、やっちゃった~。調子悪かったんです。スミマセン。」は、は。京大模試全国第5位ですよ、ばんばんのA判定ですよ、他の生徒に知れたら「嫌みか!」って言われちゃいますよ、って心の中でつぶやいてました・・・でも、彼にとってはその程度なんです。本音なんです。謙虚な姿勢は4月当初からずっと変わりません。今も同じでしょう。本当に「デキる人」は、常に上には上がいることが本当にわかっているから、偉ぶったりしないものです。弱い奴ほどよく吠える・・・
4月後半、ゴールデンウィーク前に京大の過去問(いわゆる赤本)を解いてみたから、採点して欲しい旨、申し出てきました。ちなみに、日本の大学入試において、英語に関して、最も難しい英文解釈と英作文を要求するのが、京大です。英語に関しては、東大はむしろ基本を徹底的に押さえておけばなんとかなる場合が多いのです。他教科にも同様のことが当てはまるので、東大は高校の通常授業ベースで対応できますが、京大は早期から個人添削等で鍛えないと合格ラインに届かない、というのが通説です。よって、東大の現役合格占有率は80%を超えることもありますが、京大は50%いくかどうか、つまり、合格者の半数が浪人経験者という特殊な大学でもあります。その京大の過去問添削1回目。真っ赤かにペンを入れ、渡すときに「英作文では、まず、日本語の意味をわかりやすい日本語に咀嚼してから、英語に転換するように。その際、エッセンスを上手く抽出すること。」とのみ言い添えました。その翌日、2回目を持参し、「指示されたようにやってみました。見てください。」とのこと。驚きました!全く赤ペンが入らない!ペンが動かない・・・ふむ・・・結局、ルーズリーフに大きく赤丸をつけ、Very good!!と書かざるを得ませんでした。泉で、京大阪大外大の英語添削、9年間担当しましたが、2回目、しかも、4月段階でパーフェクトな答案を仕上げてきた生徒はただ1人です。「すごいねえ。文句なし。日本語の解釈が絶妙に伝わってくるわ。」「ありがとうございます。今すぐ、京大の入試があれば良いですね。」アナタ!今、まだ、4月!本番は翌年2月25日ですよっ。「他の教科はどう?順調?世界史とか大丈夫?」「先生、暗記物は大丈夫です。僕、昔から、1度見たら、忘れないんです。なんか、写真を撮るみたいに山川の教科書や用語辞典、英語の単語帳なんかも、パシャって、一瞬で頭に入るんです。でも、これ、あんまり、人には言わないようにしてるんです。気味悪がられるんで。」「今度入学してくる弟は、私なんかより、数段上です。我が家の最終兵器です。」とは、これもまた教え子で、金大医学部医学科に現役合格した彼の姉のコトバ。その当時はにわかには信じられませんでした。だって、彼女だって、金大医学部医学科、将来のお医者さんで、成績も極めて優秀だったから。彼女より数段上って、本人が認めているって・・・でも、その言葉通りでした。模試の志望校の欄に「東大文Ⅰ」を試しに書いてもらいましたが、案の定、A判定。進路課長さんやら学年主任さんやら、「堀さーん、あのこ、京大から東大に志望変更させてまー。たのーん。東大の数、欲しいんやー。」「一応、言ってみますけど・・・たぶん、ムリです。なんなら、直接、面談されたらいかがですか?」お二方、たびたび、直接、アタックされましたけど、答えは常に同じ。「東大には興味ないんで。弱い物の味方になるんで。京大一本で。」
そして迎えた京大入試。結果は・・・もちろん合格。しかも、文系全学部を通じてトップ合格!当時、京大だけが、出身高校の校長宛に、各受験者の得点および、合格最高点と最低点を書類で伝えてくれていました。彼の得点と合格最高点がぴたり一致してました。さらに卒業式の日。いよいよ学校を去る際、3年職員室にあいさつに寄ってくれました。「先生。本当にすみませんでした。高校時代、僕は本当にダメな生徒でした。勉強に全力で取り組むということをしませんでした。先生。今日、僕は誓います。大学に行ったら、本気で勉強します。在学中に司法試験を突破します。そして、社会派の弁護士になって、弱い人を助けます!今日までお世話になりました。ありがとうございました!」実際、大学3年時(!)、司法試験を突破し、卒業後、弁護料を払えないような社会的弱者を擁護することで有名な、京都市内ど真ん中の大規模事務所に所属。見事!「なりたい自分」になっています。30才目前にして、当時の日本中で問題になっていた、英会話教材をめぐる詐欺事件での全国弁護団代表としてTVでインタビューを受けている姿は、最初の個人面談でのまさにあの凜々しさで溢れていました。就職のためには英会話が必要、という触れ込みで10万~20万円の英会話教材を契約させられ、実際には教材が送られてこない、というような事件でした。被害者の大部分が大学生をはじめとする若い年代層で、裁判で訴えようにも、費用や手続きがわからず、泣き寝入りするしかなかったところへ、手をさしのべたのが彼を代表とする弁護士たちだったのです。
偏差値ベースの価値観でのみ進路指導して、「伸びきったゴム」にして大学に送り込むことが、高校の進路指導ではありません。教員として、個人的に最も大切にしてきた価値観の一つです。昨年、本校に赴任してから、諸君にも納得してもらえるよう、いろんな場面で言葉を尽くしてきているつもりです。「キャリア教育」をベースに、「なりたい自分」を主体的に追いかける、必要なら大学を目指す、教員はその手助けをするのみ。のどが渇いていない馬を、首に縄を掛けて無理矢理水辺に連れて行っても、詮無いこと。願わくば、のどの渇きを訴えて下さい!水辺への道順を尋ねてください!本校の先生方は、待っています。ではでは。今日はこの辺で。CU ASAP!
<次回、Part2へ。To be continued.>
今回、写真がなくて、ごめんなさい・・・
「分母」「分子」書き間違えてました・・・スミマセン・・・<修正日時:9月28日(月)7:10>
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