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学校長から

「VUCAな時代を生きる意味を言志四録に求む」

 

 近年の予測困難な社会を「VUCA(ブーカ)な時代・VUCAな世界」と表現されることがある。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べた予測困難な状態を示す造語である。

 IT技術の急速な進展や新型ウイルスの出現と影響が世界的にVUCAの度合いを大きくしていることは、まさしくVUCAの時代と言えるだろう。想定外の出来事が次々と起こり、簡単に解決や対応できない問題、事前対策しにくい問題が多く、かつ多方面に渡るVUCA時代をこれからの私達は生きていかなければならない。私達がこの予測困難な社会を生き延びるためには、どのような学びが必要なのたろうか。

 その学びを示すひとつとして、江戸時代後期儒学者の佐藤一斎の「言志四録」を紹介したい。「言志四録」は、修養処世の心得を書き上げた文書である。その言志四録の中に、2つの条(語録)がある。

  少にて学べば、則ち壮にして為すことあり。

  壮にして学べば、則ち老いて衰えず。

  老いて学べば、則ち死して朽ちず。

 訳すると、「青少年時代にしっかり学んでおけば、壮年になってから役に立ち、何事かを為すことができる。壮年のときにしっかり学んでおけば、老年なっても気力が衰えることはない。老年になってもしっかり学んでおけば、ますます見識も高くなり、社会に役立つこととなり、死んでからもその人望は語り継がれる。」即ち、人生はいくつかの節目となるライフステージに分かれているが、それぞれの時代の学びを疎かにぜす、志を持って学ぶことは一生の大事であるという教えである。

  一燈を揚げて暗夜を行く。

  暗夜を憂うることなかれ。

  ただ一燈を頼め。

 訳すると、「一つの灯りを掲げて暗い夜道を歩くとき、夜道の暗さを嘆き悲しむな。暗夜をそのものを変えることはできない。できることはただひたすらに一つの灯りを信じて迷わず進め。」即ち、自分の置かれている厳しい状況を嘆き悲しむことなく、ひたすらに志を持って自分の可能性を信じてひたすら前に進むことだけという教えである。

 いずれの条(語録)にも共通する事項は、その「志」において重要なのは、青少年時の好奇心や夢中になった経験。そしてさまざまな出会いである。そして何より、学ぶことの楽しさを身につけて欲しいと願っている。

 志のために何を学ぶ必要があり、どう学べばそれが身につくのかを自分で考え、掴めることが求められるVUCAな時代をどう生き抜いていくのか、あなたは。