スクールカウンセラーのお部屋

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きっとサポーターがいる

 自分の知らないところで心配してくれる人、そっと支えてくれる人がいても、私たちは意外にそれに気づかずに「自分だけ、ひとりぼっち」などと思ってしまうことがあります。春が来たけれど、なんだか寂しい気持ちでいる人は、自分に言い聞かせてみては、どうでしょう。「自分にも、知らないどこかで心配してくれている人がいるかもしれない。気づいていないだけかもしれない。」と。たぶん、それは間違っていないでしょう。家族であったり、親戚の人だったり、友達、学校や塾の先生、よく行く場所で出会うおばさんやおじさん、その他に地域でお世話をしている方であったりもします。これらの人たちは、あなたを助けてくれる貴重な財産です。

 下の円は、あなたがふだん生活している世界と想像してください。中心の★印があなた自身です。あなたの周りに、あなたを支えてくれそうな人を思い出してみましょう。(藤森)

                        
 

知っている?ネット依存とゲーム障害

 コロナ禍にあって、またまた全国的な感染拡大の危機にあります。不要不急の外出を避け、密な接触とならない巣ごもり生活が推奨される中、ネット依存の状態となり、いざ行こうとしても、学校や仕事に行けずに日常生活に支障をきたしている人たちが増えていると報道されていました。ちなみに、依存症とは、ある物や行動にはまってしまい、自分ではコントロールできず、生活リズムが乱れ、精神的にも不安定になりがちで、日常生活に問題が生じる心の病気です。ネット依存に関していえば、男性ではゲーム、特にネットに接続されているオンラインゲームの割合が高く、女子ではSNSに依存している若者が多いのが特徴だそうです。学生にとって問題となるのは、長期に依存することで、不登校になって進学、進級ができなくなることもあることです。ネット依存の中でもオンラインゲームに依存が強いと、ゲーム障害という病気に進み、治療の対象になります。 (藤森)

引用文献:『Q&Aでわかるネット依存とゲーム障害』 樋口 進 著 少年写真新聞社 2019

『ハッ』とする詩と出会って

 「第3波」とか「ワクチン予防接種」などのコロナ関連の報道に、気持ちが下がったり上がったりする中、先日、話題の映画『鬼滅の刃』を友人と鑑賞してきました。まずは、映像の美しさに目を見張り、特に風景描写がリアルですばらしかったです。ストーリーはシンプルですが、心理学的に解釈すると、なかなか興味深い内容でした。

 ところで、4月からコロナ禍におけるストレスマネジメント(ストレスの自己管理)を意識して、さまざまな情報を収集し、その中からいくつかをピックアップし、アレンジして紹介してきました。今回は、図書室からお借りした詩集で「ハッ」とする一編の詩と出会いましたので、ここに引用します。

      自分の感受性くらい    茨木のり子

 

ぱさぱさに乾いてゆく心を

ひとのせいにはするな

みずから水やりを怠っておいて

 

気難(きむずか)しくなってきたのを

友人のせいにはするな

しなやかさを失ったのはどちらなのか   

 

苛立(いらだ)つのを

近親(きんしん)のせいにはするな

なにもかも下手(へた)だったのはわたくし

 

初心消えかかるのを

暮らしのせいにはするな

そもそもが ひよわな志にすぎなかった 

 

駄目(だめ)なことの一切を

時代のせいにはするな

わずかに光る尊厳の放棄     

 

自分の感受性くらい

自分で守れ

ばかものよ          出典:『名詞の絵本』川口晴美 編 ナツメ社  (藤森)

 

『〇〇ロス』 って?

 いつも、はつらつとして挨拶をしてくる友人が、しょんぼりと落ち込んで表情がくもっています。しばらくは、ワイワイ飲食したり、とても元気がでそうにないと伝えてきました。先日、大切に可愛がっていたペットを亡くし傷心の日々なのだと言うのです。ペットロス症候群という言葉が思い浮かびました。ペットが行方不明になったり、ペットと死別したりしたことがきっかけで病気になったり、心や身体の不調が症状に現れる状態をいいます。この場合、当人の精神的痛手は、かなり大きいと言えるでしょう。

一方、『◯◯ロス』をもっとカジュアルに使う場合もあります。例えば、夢中になって見ていたドラマが終わった時、気が抜けたようになり、『◯◯(番組の略称)ロス』とか、お気に入りの俳優がいれば、『◯◯(役名の名字)ロス』という使い方もあります。

おわかりのように、『◯◯ロス』とは、何か大切なものや大好きだったもの、夢中だったもの、懸命に取り組んでいたものなどを失くした時の喪失感を言い表します。そして、そのような時は、寂しさや気分の落ち込み、力が入らない、元気が出ないなどのうつ的な状態に陥りがちです。喪失感の深さは、その対象が、当人にとって、どれだけのウエイトを心的世界で占めていたかに関わりがあるようです。となれば、ふだんの生活でも、ありそうです。例えば、大好きなお菓子が製造中止になったとき、『◯◯(お菓子の名前)ロス』となります。そうそう、コロナ禍でお祭りがのきなみ中止になっていますが、これまで情熱を注いできた人たちにとっては、『お祭りロス』って感じでしょうか。

『◯◯ロス』って、喪失を自覚して言葉に出すことで、寂しい気持ちや悲しい気持ち、ショックを和らげているのかもしれません。そして、喪失感と向き合うには、自分の気持ちをそのまま受け止めて、表出したり、浸る時間がそれなりに必要だろうとしみじみ感じます。(藤森)

ルーティンを活用してみませんか?

 ルーティンといえば、私はラグビーの試合で、五郎丸選手がフリーキックをする前に行っていた「ボールを縦に2回転させてからセットする」「右手を前に出しながらゴールポストを確認する」などの一連の動作を思い出します。決まった動作や日課をルーティンといいますが、そうなると無意識にしていることがあるかもしれませんね。ここで、ルーティンを取り上げたのは、意識してルーティンを行うことで、その効果を実感したいと切実に望むような場合が、人には、あるからです。私自身、この文章を書いていて思い出すのは、中学生の時、地区の陸上競技大会の選手に選ばれて、大会に出た時のエピソードです。大会前では、踏み切りに不安があり、合同の練習時間を終え、皆が帰ってからも残って何度も踏み切りの練習をし、なんとか踏み切りが合うようになりました。しかし、本番は踏み切りが合わず、それまでに跳べていた距離まで跳べなかった悔しい思いが残りました。メンタルトレーニングなど、思いもよらなかった頃です。

 ルーティンを利用すれば、勉強やスポーツのパフォーマンスを高めることができると言われています。具体的には、次のような効果が期待できるそうです。

①やる気にスイッチオン
これをすれば、やる気にスイッチが入るという決まった動作や行動はありませんか。例えば、「ココアを飲めば、勉強モードに入る」とかで、勉強がすんなりスタートしやすくなるといった具合です。

②気分の転換
「緊張をほぐしたい時は、深呼吸を3回する」とか「イライラした気分の時は、手を洗ってクールダウン」などとルーティンを決めておきます。そうすることで、気分の安定を図ります。

③集中力アップ
ルーティンを行うことで、精神を集中させ、パフォーマンスの質を高め、ミスを少なくする効果を期待します。

④努力の習慣化
ふだんの生活にルーティンを取り入れ、勉強や練習などの努力を習慣化します。例えば「入浴中は、その日に覚えた英単語を唱える」などの、さまざまなルーティンが考えられます。ルーティンを手帳などに記録しておき、毎日行うようにします。(藤森)

 

<参考文献>

『ダラダラ気分を一瞬で変える小さな習慣』大平信孝・大平朝子 著 サンクチュアリ 2016