校長のつぶやき

卒業式

心配していた雨に降られることもなく、春がもうすぐそこまで来ていると感じられるほどの穏やかな暖かさの中、本校第26回目の卒業式を無事終えることが出来ました。

あらためまして、卒業生の皆さん、卒業おめでとう。

保護者の皆様、お子様のご卒業、おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。

本当に厳かで、素晴らしい卒業式であったと思います。

本日、式に出席できなかった生徒や保護者の皆様に、私のこの1年間の3年生に対する思いを知っていただきたいと思い、ここに式辞を掲載させていただきます。

 

令和4年度 石川県立金沢北陵高等学校第26回卒業証書授与式  校長式辞

本日ここに、ご来賓の方々並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、石川県立金沢北陵高等学校第26回卒業式を挙行できますことは、誠に大きな喜びであります。心より厚く御礼申し上げます。

ただ今、卒業証書を授与しました182名の卒業生の皆さん、卒業おめでとう。皆さんは「不撓不屈」の精神を胸に、夏の暑さや冬の寒さに負けることなく、この標高68.4mの丘の上に立つ金沢北陵高校に通い、W坂やS字坂と呼ばれる急な坂道を3年間登り続けました。年間約200日の授業日があるのですが、3年間で600日、距離にして40000m以上の坂道を登ったことになります。富士山なら10回以上、エベレストなら4回以上登ったことになります。すごいと思いませんか。無理だと思えるようなことでも、一歩一歩着実に前へ進めば、いつか達成することが出来るということを、皆さんは実際に体現したのです。これを大きな自信としてください。本当によく頑張りましたね。

でも、それが出来たのも、皆さん一人一人の努力の成果であると同時に、あなた方を支えてくれたご家族、先生、ご支援をいただいた多くの方々のおかげであるということを忘れてはいけません。感謝の気持ちを持って、今日の卒業式を迎えてもらいたいと思います。

さて、皆さんの高校生活の始まりはといいますと、ちょうど日本国内でコロナ感染が拡大し始めた頃と重なり、入学式の後にすぐ学校が2ヶ月間休校、学校が再開したあとも、コロナの影響でいろいろなことが中止や縮小されました。部活動においても、長い歴史の中で初めてインターハイや夏の甲子園大会、演奏会やコンクールなどが中止となり、皆さんの目標が突然目の前からなくなってしまう状況となりました。全国の多くの高校生が、辛くて、悲しくて、やるせない思いをしたことと思います。

そんな状況の中、歌を通して何か高校生にメッセージを伝えたいということで、「back number」というグループが、「水平線」という曲を発表しました。私も大好きな曲で、特に「正しさを別の正しさで、失くす悲しみにも出会うけれど」というフレーズをよく口ずさみます。目標に向かって、一生懸命に打ち込んできた高校生たちが、大会や発表会で努力の成果を発揮したいという正しさ。それが、コロナウイルス感染が拡大している状況の中で、多くの人が密集するような大会を開くことは出来ないという社会の正しさに潰されてしまったという状況を表しているのだと思います。

私はこの4月から本校の校長になったのですが、このフレーズについて考えさせられることが数多くありました。4月の遠足、6月のほくりんピック、そして、9月の北陵祭、どの行事においても、悪天候や新型コロナウイルスの感染が懸念される中、決行するのか、中止するのか、延期するのか、縮小するのか・・・、最終判断をしなければならないのが、校長である私の責任でした。その時に自然と頭の中に流れてくるのが、先ほどのフレーズだったのです。

これまでつらい思いをしてきた3年生に少しでも多くの思い出を残してあげたいという正しさと、いやいや、生徒の命、健康を守ること以上に大切なことはないという正しさ。どちらも正しいはずですが、最終的には生徒の健康を守ることを第一に考え、ほくりんピックを中止にしたのは断腸の思いでした。

そのようなこともあり、もっと3年生に何かしてあげることができないかと思っていた時に、3年生の生徒会のメンバーが、「ぼくたち、私たちにもう一つ大きな思い出を作らせて下さい」と言って校長室に入ってきたときには、本当に心の底から嬉しかったのを覚えています。生徒会の役員が、一から企画して実行に移してくれた3学年交流会は、学校全体で繋がろう・一緒にがんばろうという気持ちが伝わり、3年生の皆さんも最上級生として盛り上げてくれて、大成功を収めることができましたね。これらのことは、コロナがなければ生まれなかったことかもしれません。ピンチはチャンスに変えることができるということを先輩として後輩たちに示してくれました。どうもありがとう。

皆さんが、高校3年間で多くのことを経験したのと同じように、もしかしたらそれ以上に、これからの皆さんの人生には、いろんなことが起こるかもしれません。うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあるでしょう。当たり前のことが、当たり前でなくなることもあるかもしれません。

お父さん、お母さんをはじめ、先生方、ここにいる人たちも皆、そのような経験をいっぱい積み重ねて大人になってきました。でもね、私は思うのです。このコロナ禍の中で高校3年間を過ごし、今日卒業式を迎えた皆さんは、社会に出た後も、私たち以上に、当たり前の日常に感謝することができて、「ありがとう」という言葉をかみしめながら人に伝えられるようになっているのではないかということを。また、うまくいかないことや辛くて苦しいことがあっても、しっかり前を向いて進み、ピンチをチャンスに変えて、人として大きく成長していくのではないかということを。そんな頼もしい皆さんに、いつかどこかで出会える日を楽しみにしています。

話が長くなってきました。4月の始業式の挨拶の中で、話の長い校長は嫌われるという話をしたら、皆さんは笑顔で大きくうなずいていましたね。伝えたいことはまだまだありますが、この辺にしておきたいと思います。

保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。今日のお子様の晴れ姿に、感激もひとしおのことと存じます。誕生から今日の日を迎えるまで、きっといろいろなご苦労があったと思いますが、皆さんが大きな愛情と責任を持って、今目の前にいるお子様を今日までしっかりと育ててこられたことは間違いのない事実であります。そんな自分を今日は自分で褒めてあげていただきたいと思います。

今日のご卒業をお慶び申し上げますとともに、これまで私どもが賜りましたご理解とご協力に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

最後に、もう一度、卒業生の皆さん、本日、本校同窓会様のご厚意により、皆さん一人一人に、旅立ちを祝う花、エアリーフローラが届いています。花言葉は「希望」。まさに希望に満ちてこの金沢北陵高等学校を巣立っていく皆さんの前途に幸多からんことを心よりお祈りし、式辞といたします。

令和5年3月1日

石川県立金沢北陵高等学校長  高倉 英明