勝敗を越えたところ
東京オリンピック開会式が2日後となった。今回はどんな感動を味わえるだろうか。
前回のリオ大会で、自分が一番印象に残っているシーンはバドミントン(女子)ダブルスだ。壮絶な逆転劇で日本選手史上初の金メダルを手にした「タカマツ」ペア。手に汗握る決勝戦自体の感動もさることながら、表彰を終えた「タカマツ」ペアの松友美佐紀さんの言葉にシビれた。試合後、涙を流してインタビューに答える彼女のコメントの一部を紹介する。
「試合をしていく上で、五輪で最後と決めている選手もたくさんいて、それが辛くて、いろいろな選手がいて、いまの自分がいる、もう戦えないと思うと辛かったです。」
「苦しい練習が報われ、世界の頂点に立てて嬉しいです!」みたいな答えをするのかなと思いきや、優勝した松友さんは、相手ともう戦えない寂しさと感謝の念が、私の涙だと言い切った。試合後に、勝敗を越えて、対戦相手に思いを馳せる場面を、私は今まで見たことがなく、本当に驚いた。世界のライバルが自分を成長させてくれたという実感、それが、勝利の喜びよりも、もう試合ができないことへの寂しさを強調させたのだろう。
この夏は、「日本金メダル遂に○個!」とか「日本勝った!負けた!」で全国的に盛り上がると思うが、試合の勝ち負け以外の、様々なドラマや感動も併せて丁寧に見ていって、自分の価値観や見方を広げてほしい。
北陵生諸君も、部活動の大会に出たり、就職選考や大学受験を受けたりと、勝負に挑む機会がやってくる。その時、「勝った!負けた!」とか「受かった!落ちた!」とかのレベルを超越する体験を一度でもいいから持てるといいなと思っている。そうした超越ゾーンに入るということは、そこに至るまでの死に物狂いの努力をし続けていることが前提にあるからだ。
「自分はここまで努力できた。こんなに頑張れた自分を誇りに思うし、自分はメンタルも強い。あとの結果はもう気にならない。試合(受験)を楽しもう。」
大きな勝負を前にして、このようなことを本心から思えるようになってほしい。