第58回 石川県理科教育研究大会 金沢大会
大会主題 「小・中・高をつなぐ理科教育のあり方」
副題 ~「見方・考え方」を働かせて、主体的に問題解決を図る理科学習~
〔副題設定の理由〕
近年、知識・情報・技術をめぐる変化の速さが加速度的となり、情報化やグローバル化といった社会的変化が、人間の予測を超えて進展するようになってきている。とりわけ、第4時産業革命ともいわれる、人工知能(AI),ビッグデータ,IoT(Internet of hings)、ロボティクス等の先端技術が高度化してあらゆる産業や社会生活に取り入れられた、Society5.0時代が到来しつつあり、社会の在り方そのものがこれまでとは「非連続」と言えるほど劇的に変わろうとしている。
このように社会の変化が激しく、未来の予測が困難な時代の中で、学校教育には、子供たちが様々な変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築していくことが求められている。
新学習指導要領では、教育課程全体や各教科などの学びを通じて「何ができるようになるのか」という観点から、「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力など」「学びに向かう力、人間性など」の3つの柱からなる「資質・能力」を総合的にバランスよく育んでいくことを目指し、それを育成するために働かせるのが「見方・考え方」であるとしている。
理科においては、従来、「科学的な見方や考え方」を育成することを重要な目標として位置付け、資質・能力を包括するものとして示してきた。それに対し、新学習指導要領では、理科における「見方・考え方」を、資質・能力を育成する過程で児童・生徒が働かせる「物事を捉える視点や考え方」として整理し、これまでゴールとして位置付けていたものを、探究の過程において、児童・生徒が物事を捉える視点や考え方を自在に働かせられるように位置付けている。児童・生徒に未来を創り出していくために必要な資質・能力を身に付けさせていくためには、自然の事物・現象をどのような視点で捉え、どのような考え方で思考すればよいのかを自覚させながら、主体的に探究する過程を通した学習を行うことが大切である。以上の観点から、上記の副題を設定した。
〔研究の重点〕
中央教育審議会答申では、理科における「見方・考え方」を「自然の事物・現象を、質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え、比較したり、関係付けたりするなどの科学的に探究する方法を用いて考えること」と示されている。また、新学習指導要領解説には、「資質・能力を育むために重視する探究の過程のイメージ」が図示されており、それによると、「自然事象に対する気付き、課題の設定、仮説の検証、検証計画の立案、観察・実験の実施、結果の処理、考察・推論、表現」について、「見通し」と「振り返り」を循環的に行っていくことの重要性が示されている。
このことから、理科の学習では、課題の把握(発見),課題の探究(追究),課題の解決という探究の過程を通じた学習活動を行い,それぞれの過程において,資質・能力が育成されるよう指導の改善を図ることが必要である。そして,このような探究の過程全体を児童・生徒が主体的に遂行できるようにすることを目指すとともに,児童・生徒が常に知的好奇心を持って身の回りの自然の事物・現象に関わるようになることや,その中で得た気付きから疑問を形成し,課題として設定できるようになることを重視する必要がある。
そこで、次の3点を研究の重点とする。
① 自然の事物・現象から問題を見いだし、見通しをもって課題や仮説を設定する学習活動の充実
② 「見方・考え方」を働かせる場面を設定し、それを自ら使っていることを意識させる学習活動の充実
③ 学習過程を振り返り、必要に応じてフィードバックを繰り返す学習活動の充実
公開授業と4分科会では、これらの中から何を重点目標としたかを明確にし、小・中・高の児童・生徒の学びが、発達段階に沿った連続した「深い学び」につながるようにしたい。
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