校長室より

卒業式を終えて

 3月1日、うっすらと青く見える空。天気予報では昼頃から雨が降り出すとのこと、なんとか式が終わるまではもって欲しいと願いました。

 本光寺に車を駐車し、学校までの5分余り、歩きながら卒業していく生徒たちのことを考えました。あの学年はコロナに振り回されっぱなしの学年でした。1年生の3月頃から分散登校とかリモート学習などが始まり、年度が変わって4月から6月までの2ヶ月間は休校、総体・総文は中止となり、市高祭も大幅な縮小、修学旅行は日帰り旅行となりました。なんとか3年次は…と学校関係者なら誰しもが願ったはずですが、相変わらずのマスク生活が続きました。

 それでも彼らは立派でした。どうにもできない状況に、やり場のない怒りもあったと思いますが、節度ある生活態度で、昼食時の黙食は完璧でした。彼らが最高学年として下級生に手本を見せてくれたのではないかと思います。

 幸いにも私は、彼らが1年生の時に授業を担当していたので、何人かの生徒たちは「教え子」と言えるのではないかと思います。あの頃はマスクもしていませんでしたから、彼らの表情は生き生きとした映像で私の脳裏に残っています。授業中の真剣な顔や明るい笑顔、むくれた顔や居眠りの顔。楽しい思い出の数々、ありがとう。

 コロナ禍ということもあって、この数年間で世の中は大きく変わり、現在では国際状況も落ち着きをみせていません。卒業生の歩んでいく先にはどのようなことが待ち受けているのか分かりませんが、とにかく、幸せになって欲しい、夢を持って歩み続けて欲しいと願うばかりです。

 卒業生の皆さん、卒業おめでとう。

 The sky is the limit. 君たちの可能性は無限大です。

  

 

推薦入試を終えて

 2月8日(火)に推薦入試を実施しました。

 心配された新型コロナ感染症による別室受験者は一人もおらず、予定通りに全ての検査を終了できました。受験生とその家族の皆様には健康管理をはじめ、たくさんのご配慮をいただいた結果だと思っています。ありがとうございます。

 直前の週末にはたくさんの雪が降りました。生徒玄関前には20㎝ほどの積雪だったと思います。月曜日の朝早くには除雪車が入り、瞬く間に大きな雪の山ができました。あの作業をマンパワーでやるとしたら・・大変な作業でした。本当にありがとうございました。

 翌日火曜日には全ての受検生が作文や実技試験、面接試験に臨みました。どの受験生も背筋をピンと伸ばし、真剣に課題に取り組んでいました。この中から4月以降この校舎で一緒に過ごす生徒が出るのだと思うと、月日の流れを感じるとともに、新たな出会いにワクワクしました。次は3月8,9日に一般入試が行われます。

 

 

ちょっとしたこと ~生徒のみなさんへ~

 朝、本校の前の通りは、本校への送迎の車で交通量がグンと増えます。

 よく見ていると、本校にお子さんを送った方が、バス通学や自転車通学で道路を横断しようとする生徒のために車を止めてくれています。本当にありがたいことで、それがなければ生徒たちは渡れないことにイライラとし、ついには無理に渡ろうとして飛び出すこととなり、大きな人身事故につながっていくのではないかと、いつも思っています。

 保護者のみなさま、本当にありがとうございます。

 もう一つ気づいたこと、気になることがあります。それは本校生徒の態度です。

 車を止めてくれたドライバーにペコッと頭を下げて渡る生徒がいるなか、多くの者が何もせず渡っていきます。バス通学者の中には、小走りに横断歩道を渡ったり、ドライバーに向かって頭を下げて渡る者がいる一方、悲しいかな、やはり多くの者は歩くペースも上げず、友達と話しをしながら悠々と渡っていきます。まるで「車が歩行者のために止まるのは当たり前でしょ」と言っているかのように私の目に映ることもあり、とても悲しくなりました。

 確かに車の運転者から見れば歩行者は交通弱者であり、事故が起きれば多くの責任を負わされます。ですが、忙しい朝の時間、少しでも早く職場へ行こうとしている人たちが、自分のために車を止めてくれていると思ったとき、人は何か態度で示すべきだと思うのです。ちょっと頭を下げる、ちょっと歩く速さを早めてみる。そうした「ちょっとしたこと」が相手の心を和ませ、優しさを沸き起こしてくれるのではないかと思うのです。ぜひ、本校生徒には、そうした人の立場に立って感じられる、考えられる人になって欲しいし、特に「ありがとう」という気持ちに関しては、それを動作や言葉で表すことのできる人になって欲しいと思います。

 「ちょっとしたこと」の連鎖でこの世界は少しあたたかくなる。あなたの気持ちも「ほっこり」しますよ。

 明日の朝、「ちょっとしたこと」を実行してみませんか。

「ありがとう」~ある生徒の心温まる行い~

 11月下旬、学校に一通の葉書が届きました。今回はこの葉書にまつわるお話しをしたくてペンを取りました。

 11月18日朝の登校時間に、ある先生から「本校の生徒がおばあちゃんを抱きかかえていた」という報告をもらい、自転車で登校途中に接触したのかもしれないと思い、大急ぎで現場に向かいました。すると、向こうの方から本校生徒と小松商業高校の生徒に両脇を抱えられ歩いてくるおばあちゃんの姿を見つけました。聞くと、歩道を歩いていたおばあちゃんが転んでしまい、ふらつきがあったので、心配したその二人の生徒が自分の自転車をその場に置いて、自宅までおばあちゃんを送り届けようとしている、というのです。おばあちゃんの額には大きなコブができていて、意識ははっきりしているものの、足下はおぼつきませんでした。程なく、心配して探していた家族の方が見つけてくださり、おばあちゃんは無事に車で帰っていきました。

 この二人の男子生徒。なんと優しい、勇気のある行動でしょうか。自転車を置いて家まで連れて行こうとすれば、確実に自分は学校に遅刻してしまいます。それでも、全てを承知して、困っている人を助けようと決断し行動する、なかなかできることではありません。人と人とのつながりが薄らいでいると言われている今日において、この男子生徒の行動は「人とはどうあるべきか」を改めて考えさせてくれた出来事でした。勉強ができる、運動ができる、テストの点数が良い、賞を受賞する、大きな大会で勝利したり有名大学へ進学したりするなど、高校生に関わる「良い点」はたくさんありますが、ひょっとしたら特記事項にも書く機会が与えられないようなこのような善行は、人としては「最高賞」に値すると思うのです。

 せめてこの葉書を渡したいと思い、該当の生徒は名乗り出て欲しいと伝えましたが、とうとう名乗り出ませんでした。この場をお借りして葉書の内容を伝えたいと思います。(一部省略します)

 「小松市立高校 男子生徒様 11月18日の朝、八幡付近で転んで立ち上がれなくなった母を助けて頂きました。生徒様のお名前も分からず、別の方から教えて頂いたのでお顔もちらっとしか見られず、御礼も言えなかったので、このような形をとらせて頂きました。母は認知症で朝一人で出掛けてしまい、心配して捜しておりました。事故にも遭わず無事だったのも生徒様皆様のお陰です。本当にありがとうございました。私の長女の後輩の生徒様に親切にして頂いて、大変うれしく思いました。ありがとうございました。」

 私からも敬意を込めて、「ありがとう」を伝えたいと思います。

Art Gallery 市高~10月~

 本校美術コースが行っている校内展示会のご紹介です。本校を巣立って行ったたくさんの先輩たちが残した作品から、テーマに合ったものを掘り起こし、校内に展示するという企画です。

 今回のテーマは『私の世界』。実は9月には展示が始まっていました。校長室に掲げてくれた作品をご紹介します。

 1枚目は「What clothes give.」堀口 和行さん(21期生)の作品です。ある洋服店の正面を描いた作品。ショーウィンドウには猛獣となった女性と頭にボールをのせた男性の熊がいます。店の中には数人の店員が・・「シー」と指を口に当てています。ドアでお客を招き入れようとしている店員(?)は全身ウサギの着ぐるみ。ちょっとうつろな男性が店へと誘われて行きます。暗闇にポツンと灯がともった店に入り、なりたい自分に変化する。私たちが持っている変身願望でしょうか。

 2枚目は胸像を描いた油絵です。「静物画」高田 美希さん(2期生)の作品です。なぜこの作品を選んだの?と展示に来てくれた生徒に聞くと、台の上にある一つのオレンジが作品全体に広がっていて、背景にはオレンジの実が描き込まれているんです、そこに独自性を感じました、と答えてくれました。なるほど、よく見ると背景にはオレンジの果実のブツブツとした房が描かれています。全体を覆うオレンジ色の世界。おもしろい作品ですね。

美術専攻の皆さん、いつもステキな絵を届けてくれてありがとうございます。