2025年8月の記事一覧

被災者を一番苦しめているものは?

地震から 606 日目

豪雨から 342 日目

 

「国が認めないなら腹を切る!」

時は平成の時代

火山活動が数年続き

40名を超える死者が出た

雲仙・普賢岳の災害対応での

当時の鐘ヶ江島原市長の言葉です

 

火砕流の恐れがあるとして

法に基づき立入を禁止する

「警戒区域」を全国で初めて導入しました

 

「出て行け」と命じられた住民に対して

何の保障もありませんでした

国は「自主再建が原則」の一点張り

 

思い詰めた市長が実際に口にした言葉

県幹部があわててその場は諌めましたが

その後市長が戦い続けて

それでようやく

国が財政的に支援するしくみが

つくられたそうです

 

国が出て行けと言っておきながら

何の保障もないというのは

どう考えてもおかしなことです

 

そのおかしなことが

輪島でも現在実際に起こっています

 

地震で土砂崩れのある稲舟地区は

立入禁止区域となっています

「いつになったら水道が復旧するのですか?」

「立入禁止なので復旧の予定はありません」

「私の家は一部損壊で何とか住めるので

 水道がなくても帰ります」

「立入禁止なのでそれはできません」

「では仮設住宅を申し込ませてください」

「仮設住宅は半壊以上の方でないと入れません」

「ではどうすれば…」

「ご自分でアパートを探してください」

「このへんにはありません」

「金沢の方に行けばあるでしょう」

「家賃の補助などはあるのでしょうか?」

「みなしアパートの補助は2年間なので

 それ以降は自己負担となります」

これは実際のやりとりです

 

復興を最も妨げているのは『法律』

被災民を今でも苦しめ続けているのも『法律』

 

こんな話をさせていただく機会を

ある大学さんからいただきました

 

同じ石川県内であっても

「もうだいぶ復興進んだんでしょ」

という認識の方が多い中

県外の大学なのに

このような取り組みをしてくださり

そしてそこにわざわざ

聴きに集まってくださる方がいらっしゃることに

感謝の気持ちしかありません

 

精一杯準備をして臨んだ講演

後ろの方の席に

ずっとうつむいている学生がひとり

 

「私の講義スタイルは壇上からではなく

 聞いてくださる方と同じ目線で行います」

と適当なことを言って客席に降ります

 

徐々にその学生との距離を詰めますが

一向に前を向く気配もなく

ついに彼の目の前にたっても

ゲームをやめる気配はありません

 

「ゲームをしたければ外でやってください」

退出を促しましたがそのまま

 

壇上に戻りましたが

その時頭の中に浮かんできたのは

傾いた校舎の中で

それでもしっかり前を向いて

授業に取り組んでいる

輪島高校の生徒の姿

 

そしてこれまでこのブログには

決して書くまいと決めていた負の側面

不誠実な一部行政の対応

被災地の生徒を番組作りに利用する一部マスコミ

そういったものが一気に押し寄せてきて

10分ほど壇上で黙り込んでしまいました

時間にして数分だったかもしれません

でも自分にはそれだけ長い時間に感じました

 

これまでに何人も

居眠りする生徒や内職する生徒

しまいには教室を飛び出す生徒など

山ほど相手してきました

だけど今回は特別でした

 

その後の講演で何を話したか

パネルディスカッションで

どんなやりとりをしたのか

全く覚えていません

 

「6秒我慢すれば怒りは通り過ぎる」

アンガーマネジメントでよく言われますが

嘘です

そんなもんじゃ本当の怒りは収まりません

いや収まってあの程度だったのかもしれません

 

せっかく招いてくださった大学さん

集まってくださったみなさんに

本当に申し訳ないことをしました

 

役目を終え

帰ろうとすると

さっきの学生さんがわざわざ待っていて

「すみませんでした」

と頭を下げてくれました

 

自分のしたことの意味をしっかり受け止めて

誠実に謝罪できる彼の姿に

この国の明るい未来を見ることができました

 

私は常日頃先生方には

「授業中寝る生徒は悪くありません

 寝たくなるような授業しかできない

 教員が悪いのです

 授業の技術を磨いてください」

と言っています

 

今回も彼は悪くありません

ゲームよりもつまらない話しかできなかった

私の未熟さです

私の命の講義はゲームに負けたのです

私の怒りの本質はそこにあるのです