2024年11月の記事一覧
名画探訪
地震から316 日目
豪雨から52 日目
昨日訪れた大塚国際美術館
世界26カ国
190余りの美術館が所蔵する名画約1000点を
原寸大で陶板に模写し焼成した作品が
全長約4kmの展示ルートに沿って
展示されています
クリムトの
「接吻」
1873年にウィーン万博に出品された
尾形光琳の「紅白梅図屏風」に影響を受け
金箔を施した作品に仕上がっています
ウィーン生まれのクリムトは
26歳の若さで描いた「旧ブルク劇場の観客席」で
第一回皇帝賞を受けました
その後受けた
「医学、哲学、法学をテーマに」という
ウィーン大学の天井画の依頼に対し
裸婦や死神を描きやり直しを命じられます
しかしクリムトは
「頭の固いレガシーはだまれ」と一蹴
無視してこの作品を仕上げますが
結局契約は破棄されます
クリムトは伝統主義で保守的な
古き良き時代を愛するウィーンに愛想を尽かし
独自の画風を確立させていくのです
印象派の巨匠ルノワールの
「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」
賑やかな舞踏会の様子が
明るい色彩と独特の柔らかな筆致で
表現されています
黒を使わずに鮮やかな純色のみで表現する
「虹色のパレット」と呼ばれる
ルノアールの色づかいが
見事に再現されています
フランスの労働者階級に生まれたルノワールは
磁器工房の絵付けで
絵に関する才能を発揮していましたが
産業革命の影響で職を失い
カフェの壁の装飾や
日用品に絵付けする仕事などで
細々と食いつないでいきます
貧しい中でも「美しさ」を追求し続けた
ルノワールの作品は
美しいものへの愛情と情熱に包まれています
ルーベンスの名画
「キリスト昇架」
フランダースの犬で
ネロとパトラッシュが最後に見た絵です
実物はアントウェルペン聖母大聖堂に飾られています
この作品がきっかけとなり
バロック様式の絵画が知られることになります
三面鏡のような作りとなっていて
開閉ができる扉の裏側にも
絵が描かれているそうです
聖堂のあるアムステルダムの駅は
東京駅のモデルとなりました
ファン・エイクの
「ヘントの祭壇画」です
実物はベルギーの古都ゲントにある
聖バーフ大聖堂に飾られています
中央には玉座に座るキリスト
その周囲には聖母マリアや
洗礼者ヨハネらが配置されています
細部まで非常に精緻に描かれており
宗教的なテーマが強調されています
ファン・エイクは謎の多い画家で
この作品も兄が手がけたものを
引き継いで仕上げたとされていますが
その兄も実在したのか疑問視されているそうです
苦しいときこそ笑わなあかん!
今日の「大阪人の格言」
『一円を笑う者は百円で大爆笑や』
鳴門紀行
地震から315 日目
豪雨から51 日目
鳴門教育大学に招かれて
講演会をしてきました
鳴門教育大学は1981年に創立された
教員養成のための大学で
教員就職率全国トップを誇ります
大学院生の4分の1が現職教員で
今回の講演にも
多くの現職教員の方が参加してくださいました
その学ぶ姿勢に尊敬です
招聘してくださった阪根教授のゼミ生は
今回の被災に際して
現場まで視察と支援に来てくださり
その際設置してくださった
「おもちゃの王国」を
再現展示してくださっていました
オンライン授業用のスタジオもありました
奥能登5高校の復興再建には
教員不足の解消といった大きな問題が
立ちはだかっています
物理化学生物地学あるいは
地理日本史世界史
さらには音楽美術書道
全ての学校に
全ての科目の教員を配置することが
極めて困難です
オンライン授業をうまく取り入れながら
その解決を図っていくことが求められます
このようなスタジオを
各校に設置していくことで
新しい時代の教育のスタイルが
構築できると感じました
帰りのバスまでの待ち時間に
鳴門の渦潮を見にいきました
太平洋が満潮になると
紀伊水道を通って
淡路島の北東側つまり
大阪湾に海水が流れ込みます
その海水はさらに
明石海峡を通って
淡路島の北西側
つまり瀬戸内海へ
ここまで到達するのにおよそ5時間かかります
この頃には太平洋は干潮を迎え
水位が低くなっているので
瀬戸内海に流れ込んだ海水は勢いよく
淡路島の南西
つまり鳴門海峡を通って
太平洋へと還って行きます
これが渦潮発生のメカニズムです
春先の潮の干満が大きくなる頃
最も渦の発生が盛んになり
20〜30mのものも見られるそうです
その渦に飲まれてしまったら最後
二度と上がってこれず
なので鳴門海峡の海底が
どのようになっているのか
未だ目にした人はいないのだそうです
地震いや地殻変動の時にも思い知らされましたが
自然の力の大きさに畏れるばかりです
ナルト巻きってもしかして
ここから名付けられたのかな
気になって調べてみたらビンゴ!
このように潮の流れが速く
また晴天が続くことから
塩分濃度の高い清澄な海水に恵まれた鳴門は
昔から塩づくりの盛んな地でした
製塩業はおよそ400年前の慶長4年に始まったとされ
60年ほど前まで大きな塩田風景が広がっていたそうです
鳴門教育大学も塩田の跡地に建てられたので
液状化が懸念され防災教育にも力を入れているそうです
流下式の製塩で能登半島に伝わる揚浜式とは
また違った製塩法ではあります
そのあと大塚国際美術館へも足を運びました
世界中の名画の陶板レプリカを展示してあります
大正時代
製塩業で財をなした大塚武三郎氏が
薬の開発にも乗り出します
点滴液を足がかりとして
オロナイン オロナミンなどの新薬を販売します
大塚製薬の誕生です
薬の名前には「ン」で終わるものが多いです
これは次々と日本の新薬が開発された時代は
それまで右から左へ書いていた
日本語の横書き表記を
欧米のアルファベット表記に揃えて
左から右へと変えていた時代なので
消費者が間違えないようにと
最後を「ン」にしたそうです
キャベジン バファリン…なるほど
やがて食品部門にも参入し
薬品包装の技術を生かし
レトルトカレーを開発します
ボンカレーです
点滴液を甘く味付けして売り出します
ポカリスエットです
この時食品会社のタブーにも挑戦しています
イメージカラーに青を採用したのです
青い食べ物がないことから
(せいぜいエビの卵くらい)
青は食欲を減退させる色として
食品会社が忌み嫌ったからです
こんなとこにも新しい街づくりへの
ヒントがありますね
かくのごとく
次々と新製品を世に送り出した大塚製薬が
社会貢献のためにと造ったのが
この大塚国際美術館です
レプリカとはいえ
圧倒的な迫力です
苦しいときこそ笑わなあかん!
今日の「大阪人の格言」
『月が欠けてくときに文句言うか?!』
【意味】
つべこべ文句ばっかり言うな
いざ鳴門へ
地震から314 日目
豪雨から50 日目
明日開催される
鳴門教育大学の大学祭「鳴潮祭」にお招きいただき
「学校が避難所になったら
〜能登半島地震からの教訓〜」
と題して講演をさせていただけることとなりました
同学の阪根ゼミ
おもちゃの王国プロジェクトの皆さんは
被災地にお越しになり
子どもの居場所づくりのために
レールブロックを寄贈くださり
その使い方もレクチャーしていただきました
「街プロ」のグループのひとつが
活用させていただいています
昨夜は途中大阪で1泊して
OECD「教師生徒サミットinパリ」に参加する
生徒のみなさんと
オンライン会議をしました
ホテルの窓からの景色です
ここも大阪の陣で焼き尽くされた場所です
こんなに見事に復活
この景色を
秀吉や淀君がご覧になったら
どんなふうに思うのだろう
被災後日本各地から招待され訪れるたび
こんなことばかり考えるようになりました
歴史の大きな流れの中
そこで生きてきた方々に
思いを馳せることが本当に多くなりました
歴史を勉強し直したいと
この歳で学ぶことの本当の楽しさを
再認識しています
同じことを生徒たちも
一人ひとりがしっかりと考えるように
なってきていると思います
発災前は先生方に
「授業中寝ている生徒を起こしていると
他の生徒の学びの時間を奪うことになるから
起こす必要はない
自分が教室に入って起こして回るから
それよりも生徒が寝ないような
魅力ある授業作りをしてくれ」
と日頃話していました
授業中寝ている生徒を
起こして回るのが校長の仕事でした
それだけ実は授業中寝ている生徒が
多かったのです
ところが今は授業中寝ている生徒はゼロです
集会でもうつむいている生徒がいません
全員がしっかりと顔を上げて
話す人の顔を見ています
発災後しばらく気を遣っているのだろう
と思っていたのですが
もう一年が経とうとする今でも
その様子は変わりません
つらい思いをして
学ぶことの本当の意義を
一人ひとりが考えるようになったと
そう信じています
高速バスで鳴門へ向かいます
車窓からは神戸の街並み
ここも奇跡の復活を遂げた都市
犠牲になられた方に心の中で手を合わせ
明石海峡大橋を渡って淡路島に入ります
淡路島は洲本市に入りました
どこかで聞いたことのある
懐かしい匂いのする地名だなとしばし熟考
思い出しました
確か私が大学生の頃流行った
ファミコンのRPG「なんとか殺人事件」
の舞台となった場所です
当時家庭教師として勉強を教えていた子が
一生懸命語ってくれました
だから懐かしい匂いがしたんですね
そのゲーム何て名前だったかな?
車窓いっぱいに広がる畑
今は時期が違うかもしれませんが
淡路島は玉ねぎの産地
私も一度いただいたことがありますが
本当に大きくて甘いんですよね
播磨灘・大阪湾・紀伊水道
3つの海に囲まれた淡路島
海のミネラルを豊富に含んだ
肥沃な土壌で育てられた玉ねぎは
甘さと栄養分がギュッと凝縮しているそう
眼下に渦潮が広がります
もうすっかり日も暮れてよく見えないので
明日帰りにしっかり見ようと思います
苦しいときこそ笑わなあかん!
今日の「大阪人の格言」
『下向いても地べたしかないぞ』
【意味】落ち込んでもいてもしょうがない
エラーした阪神の選手に向けられた
「さっさと顔上げんかい!
いつまで甲子園の土見とんねん?
プロのくせに持って帰る気か!」
大阪のおっちゃんのヤジはおもろいです
ハーバード大の27の落書き
地震から313 日目
豪雨から49 日目
高体連 高文連の新人大会が
県内各地で行われています
輪島高校は郷土芸能部の担当です
本校和太鼓部の1・2年生部員は4名
そのうち3名が運動部と兼部しているので
今回は演奏できず
残った稲木茉那さんが
生徒委員長として
演奏会全体の運営に携わりました
開会式において開会の言葉を述べました
開会の言葉で思い出したのですが
ハーバード大学の図書館には
27の言葉が落書きされているそうです
一部を紹介します
1.今居眠りすれば、あなたは夢を見る
今学習すれば、あなたは夢が叶う
If you sleep now, you will be dreaming.
If you study now, you will be achieving your dream.
2.あなたが無駄にした今日は
どれだけの人が願っても叶わなかった未来
The today that you wasted is the tomorrow
that a dying person wished to live.
3.物事に取りかかる最適な時期は
「遅かった」と感じた瞬間
When you think you are slow,
you are faster than ever.
そして17条には
17.教育の優劣が収入の優劣
Education equals to income.
震災によって
この子らの将来の収入が「劣」とならないよう
学校の復興をしていかなければ
その足がかりとして明日
経済同友会 共助資本主義の実現委員会
能登半島地震支援イニシアティブ
「のとマルチセクター・ダイアローグ」
に本校からも参加します
私は明日徳島で震災に関する講演会の依頼があるので
現在OECDとの共創に中心となって携わっている
岡本夕佳先生が代理で参加します
これまでの輪島高校の取り組みを発表
この地の教育の創造的復興について
提案・要望をお話ししてきます
ちなみにハーバード大学へ行っても
実際にはさっきの落書きはありません
SNSで勝手に拡散されたものだそうです
苦しいときこそ笑わなあかん!
今日の「大阪人の格言」
『とりあえず自動ドア開けるとこから始めたらどうや?』
【意味】できることからやればいい
ところで私は
自動ドアの前に立っても開かないことがあるし
自動水栓に手をかざしても水が流れないことが
しばしばあります
あれっていったい何に反応しているのでしょうか?
存在感が薄いということでしょうか?
昔から不思議でなりません
リアル本屋へ行こう!
地震から312 日目
豪雨から48 日目
新人大会が開幕し
各部それぞれ頑張っています
箏曲部です
邦楽新人演奏会に出場し優良賞をいただきました
顧問の山上先生から次のように報告いただきました
輪島は幾度となく冷酷に無惨に自然災害に襲われましたが
前向きに練習に励んだ生徒たちが結果を出してくれました
人間的に成長した姿を見ることができました
また明日から練習に励みます
先日「未成年の主張」で
「被災地に本屋がない!
教育長さんなんとかして」
と台本にないことを突然叫んだ彼
その叫びに
本当に丁寧に対応してくださり
ヒントのお返事をくださった教育長様
オーディエンスからは
「今はオンライン書店で買えるじゃない?」
とのレスポンス
リアル本屋を作るなんて時代錯誤も甚だしい
とのご意見もあります
「でも本当の本屋がいいんです…」
と言っていた彼
そこでリアル本屋の魅力を考えてみようと思います
決してオンライン書店サービスを
否定するものではありません
私も本当によく利用させていただいています
“読みたい本があれば”
24時間いつでも注文できて
翌日にはもう到着ですから
こんな便利なサービスはありません
ここでのポイントです
あくまで“読みたい本があれば"
という前提つきなのです
リアル本屋はとても魅力的な空間です
それも街の中にある小さな本屋さん
10分ほどで店内一周できるくらいの
小さな本屋さんであっても
そこにはさまざまなジャンルの本が並んでいます
店主がこだわりぬいて品定めをしています
これまで自分が知らなかった世界もあります
店を一周する10分間でありとあらゆる情報が
目に飛び込んできます
タブレットを渡されて
「10分間でいろんなこと調べてごらん」
そう言われてもタカが知れています
能動的に情報を捕まえに行くという
限りなくエネルギーを使うプロセスを伴うからです
「おすすめの本」を紹介してくれますが
これもあくまでも
これまでの検索履歴をもとにしたものであるため
自分にとって全く新しい世界に招かれることは
極めてまれです
郊外の大型書店だと
書籍の量が圧倒的すぎて
逆に選びきれず
結局何も買わずに出てきてしまう
というのが私の習性です
脳のキャパシティが小さすぎるのが
その原因と思われますが
京都の一見はんお断りの店みたいに
両手を広げてそこに収まるお客様に
本当に心のこもったおもてなしをしたい
と言い聞かせています
リアル本屋での
「あれ?なにこれ?」
という好奇心をくすぐられる出会いを
ぜひ被災地に取り戻したいです
話は少しずれますが
高校を卒業して新生活を始める時に
毎年生徒に伝えることがあります
それはアパートを探す時
近くのコンビニの書籍コーナーを必ず覗け
ということです
いかにもエロオヤジの好きそうな本しかない店の周りは
確実に治安がよくないです
苦しいときこそ笑わなあかん!
今日の「大阪人の格言」
『逃げんでええやろ追いかけてけえへんのに現実は』
【意味】逃げるな