校長室より「おこらいえ」
つみきのいえ
151日目
朝市界隈にある
焼け残った我が家
そこに潜って
整理をする日々が続いています
電気が点かず薄暗いので
天気がいい日の
朝日が差し込む
学校が始まるまでの数十分と
勤務時間が終わった後の
夕陽が差し込む数十分
公費解体の申請をしているので
その時一斉に処分してもらえば
そんなもんですが
解体の対象となるのは家屋のみ
家財道具などは
解体が始まるまでに
自分で処分しないといけません
割れた茶碗や
濡れてシワクチャの本
一つひとつに
ありがとう
思いを込めて
綺麗にしてあげて
サヨナラしています
倒れた本棚をヨイショと起こすと
中の本たちがドッサー
いつか読もうと思って買ったものの
読む暇がなく
そのままにしておいたものもたくさん
さすが読みたいと思って
買った本たちばかり
こんな面白い本屋さんあるか?
でも消防車の水を吸ったものが多く
ページを捲るとベリベリ
ミルフィーユみたいにポロポロ
みなさん
おすすめです
特にお目当ての本がある訳でもなく
なんか面白いのないかなーと
本屋をうろつく時は
自分の本棚
眺めてみてください
自分の好みにぴったりの本が
たくさん見つかりますよ
そうやって
倒れた家財を一つひとつめくっていくと
知らなかった我が家の歴史に
出会います
こどもたちがつくった
幼稚園の時の作品
お母さんの誕生日に贈った
こどもたちの手紙
あの頃忙しくて
ほとんど家にいなかったな
知らない間に
こんなしあわせなひとときを
過ごしていたんだな
子供たちがいい子に育ったのは
お母さんがこんなに
がんばってくれていたんだ
一冊の絵本が見つかりました
「つみきのいえ」
うみのみずがだんだんあがってくる
ふしぎなまちのいえにすむ
おじいさんのおはなしです
みずがあがってきて
これまですんでいたいえが
しずみそうになると
そのうえに
あたらしいいえをたてます
そうやって
つみきのように
どんどんいえはうえにのびていくのです
おばあさんをなくし
ひとりぐらしのおじいさんは
つぎのあたらしいいえをたてているとき
うっかりたいせつなだいくどうぐを
おとしてしまいます
どうぐは
したのしたのいえへと
どんどんしずんでいきます
おじいさんは
せんすいふくをきて
どうぐをとりにもぐります
おじいさんのめのまえにひろがるのは
おばあさんがなくなったころのいえ
こどもたちがすだっていったころのいえ
…
こどもたちがうまれたころのいえ
そして…