校長のつぶやき
雪が教えてくれるもの
北陵高校は丘の上にあるから、雪が積もったら大変でしょう。
よく言われますが、むしろ、雪が活気を一層与えてくれます。
元気に登校する生徒たち、自ら進んで雪すかしをしてくれる生徒たち。
皆さんの頼もしさを実感する季節です。もちろん、換気もよろしく。
自己評価できる行動を
昨日の終業式では「自己評価」について次のような話をしました。
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人間は社会的動物。その私たちが、社会生活を行う上で気にすることは評価。就職試験や進学受験、学校のテスト、そして友人関係。全部、相手が自分をどう評価してくれるかということ。多くの皆さんが抱える悩みやトラブルも、相手から不本意な評価を受けることから発生している。
周りからの評価からは避けられない。しかし、ある程度は薄めることができる。
それは、自分で自分を評価する比重を高めること。周りの人と比較するのではなく、昔の自分と比較する。他の人と比較して、自分がこんなに劣っていると思って、しょげる人がいる。逆に、周りがやれないことを自分ができて、天狗になって、偉そうに振る舞う人もいる。どちらもあまり良いとは思えない。「他者評価」に頼り切っている。
むしろ、過去の自分と比べて、どれだけできるようになったか、あるいは、以前よりも劣ってきたか、を考えて欲しい。これを「自己評価」という。人は「他者評価」と「自己評価」のバランスで生きている。自分の生き方をそう簡単に人に預けるな。
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さて、冬休みに入り、自分で自分を評価する場面は作れましたか。未だの人は、親御さんに言われる前に、自ら進んで家の周りの雪をすかしてみてどうか。本校の先生が作った12月の川柳は、煉獄さんからのメッセージになっていました。煉獄さんのように強く自己評価できる精神を心の中で燃やしていきたいものです。
文芸の香り
現在、校内には文化芸術の香りのする掲示物が色々と見られます。
下はお薦め本紹介、右は書道の授業で
制作した仮名文字の生徒作品。
厳しい冬を前に清々しい気持ちになります。
伝えるスキル
「そんなことじゃダメだ。もっと頑張れ」「社会に出たら役に立たないぞ」「大人になってからだと間に合わないぞ」。学校で、先生が生徒にしばし発する言葉。私もよく使っていた。
しかし、何かモヤモヤ感が残ってしまう。こうした言葉で相手を変えられるのだろうか?
周りの先生からは「校長、熱意があれば伝わりますよ」とも言われた。でも、私は伝えるスキルにもこだわってみるべきだと思う。「何をどう伝えれば、行動を変えてもらえるか」。北陵高校の後半はテーマ研究発表やライフプラン発表など、生徒自身がプレゼンをする機会が格段に増える。相手にうまく伝えるスキルを、この時期、先生や生徒、皆で共有しておきたい。
そこで見つけたのが『実践 行動変容のためのヘルスコミュニケーション』(奥原剛著 大修館書店)。保健医療従事者が患者さんや市民の方々に対して健康・保健指導を行う際に用いる本であるが、学校現場でもかなり役立つ。具体的には、人の行動を変容させる10原則があるという。
「お・く・す・り・し・め・じ・し・ち・う」(お薬、シメジのシチュウ)
(お)驚きを与える (く)クイズを使う (す)数字を使う (り)ストーリーを使う (し)視覚に訴える (メ)メリ・デメで感情に訴える (じ)情報を絞る (し)シミュレーションしてもらう (ちゅ)中学生にも分かるようにする (う)受け手の視点で考える
これから伝えようとする中身に、この10個の内どれくらいの要素が入っているか、吟味していこう。生身の人間と触れている現場感覚としては、「伝えた」という実績で満足するのでなく、相手の行動が少しでも変わったかどうかで評価したい。
ということで、本校の、秋の景観の素晴らしさを(し)を使って、私も表してみる。
人と違った切り口
昨年の試行を経て、今年度から本格的に始めた本校独自の朝学習「好奇心の種蒔」。
原則、月・金の朝10分を使って、本校先生方が作ったオリジナル問題に生徒が取り組み、25回目が過ぎました。
先日の『好種』問題はこんな感じでした。
“Aさんは犬を飼うことにしました。そのことを友達のBさんに伝えたところ、Bさんは「ペットを飼うのは人間の身勝手だ」といいました。Bさんの発言について、あなたはどう思いますか。160~200字で書きなさい。(『藤原流200字トレーニング(藤原和博 光村図書)』より抜粋)
生徒の答案を見ると、ペットを飼うことはむしろ良いことだという意見が多数。一方、殺処分の現状を知る生徒からBさんの言うとおり人間は身勝手だとの意見もあり、大きく2分されました。
生徒たちの答案の中で、はっと目を引くものを見つけたので紹介します。
「Bさんの発言はAさんを全否定している気がする。この発言は、Aさんがまるで何も考えずに飼うことを決めたかのように決めつけた心ない言葉だと思う。(~以下略)」
これは冴えた意見です。確かに、この問題は「Bさんの発言について、どう思うか」を聞いています。ペット飼うことの是非を越え、言い方・伝え方に焦点を当てた切り口で、読み手の印象に残ります。そう言えば、「そもそも『身勝手』って何だろう?自由と身勝手とどう違うのだろう?」と自問していた答案もありました。残念ながら途中で尻切れになっていましたが、私はこれは面白い着眼点だと思います。
これからの受験シーズン。小論文でも意見文でも、問いを正確に把握すること。そして、あなた独自の視点をアピールすること。この2つの力を付けていきましょう。
独自の視点ということで、本校の川柳の先生の最新作です。
努力と夢
努力すれば、夢はかなうのか。
一握りの勝者の裏側には、大多数の敗者がいる。彼らの夢が叶わなかったのは、努力が足りなかったからか?
東京オリンピックの陸上男子400メートルリレー決勝。メダルを期待されていた日本チームは、得意のバトンパスでミスが出て、途中棄権に終わった。このレースで金メダルを目指すには、走者4人のスピードを落とさずバトンをつなぐギリギリのラインを攻めるしかない。そこに果敢に挑んでの結果を「努力が足りなかったから」と言えるだろうか。
アスリートの世界は、努力をすれば結果が必ず付いてくるほど甘い世界ではない。持って生まれた才能もいるし、何よりも運がいる。どんなに必死で頑張っても、夢や目標が達成できない経験は、人生で何度も何度も味わう。特に、スポーツはその現実を突きつけてくる。それ故、人それぞれの能力や環境の違いを見つめ直し、自分の限界や可能性を考えるきっかけになる。「努力」することの意味でもある。
「夢(希望)」は、苦しくて仕方ないとき、あなたの心を癒やしてくれる。マッチ売りの少女は、雪の降りしきる道路で、マッチを一本するごとに夢を見ていた。暖かいクリスマスパーティ、優しいおばあさんの幻像などを夢の中で見て、微笑みながら最期を迎える。夢(希望)は、どうしようもない苦しみに耐えるための必要アイテムだ。
しかし、夢ばかり追っていると、私たちは、夢と現実の落差を感じるようになる。この落差が、逆に、あなたの心を苦しめる。解決するためには、どうすれば夢に少しでも近づけるのか、そのルートを探ること。そして、一歩ずつ絶え間なく近づき続けること。この2つの行動しかない。「どうせ自分は~ 」と思ってすぐに諦める人、うまくいかないことを周りのせいにする人は、夢も持てないし、努力もできない。
夢(希望)に向けてのルート探しの中で、当初とは違う夢を再設定しなければならないこともあるだろう。でも、再設定した新たな夢(希望)に向かって、一歩ずつ進む努力をし続けていけば、いつかは花が咲く。
北陵高校は、キャリア教育を軸に据えている学校だ。特に1年生は、自分が進む方向に向かってのルート探しの旅が始まっている。本校での教育活動をうまく利用して、皆さんの夢(希望)に向けてルート設定を行って欲しい。
先の見えない戦場
先日の朝日新聞に、金沢市保健所を密着取材したリポートが掲載されていた。
現在の保健所の1日は、「職場には電話するな!」と迫る人、「何時になったら入院できるんだ!」とすごむ人、発症日までの行動を正直に話さない人、「保健所は見殺しにする気か!」と怒鳴る人、鳴り止まない電話の対応に明け暮れている。帰宅は連日深夜。睡眠は4.5時間。めまいや吐き気が続き、休養する人も出ている。毎金曜の昼には「カレー」がふるまわれる。曜日感覚を忘れないようにするためだ。
職員の「何時になったら終わるのか、先の見えない戦場です」という言葉に胸が詰まる。
2学期に入り、生徒諸君には「感染拡大防止で、今、あなたが出来ることを丁寧に」と言い続けているが、しんどい時には、限界で業務に当たっている保健所の方々を思いやってみよう。
私たちには翼がある
本日の始業式で、生徒の皆さんに次のような話をしました。
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8月24日、東京パラリンピック開会式でのパフォーマンスが印象に残っている。
国立競技場を空港の滑走路に見立てて、そこから飛び立とうとしている小さな飛行機。13歳の車椅子の少女がその飛行機を演じている。でも、翼が片方しかない。でも、一生懸命飛び立とうとしている。そこに、個性的な様々な乗り物が集まって、その仲間達からの励ましで、片翼の飛行機は空に飛びたつ、というストーリー。
そのタイトルは 「We Have Wings(私たちには翼がある)」。大会公式ツイッターによると、人間は誰もが、自分の「翼」を持ち、勇気を出して、その「翼」を広げることで、自分の夢に到達できることを、テーマにしたようだ。
実際、日常生活に困難を抱えている方々はいらっしゃる。目に見える障害でなくでも、私たちにも「心の翼」が少々もぎ取られてしまったような苦しみを抱えている人たちはいる。そうした人達に対して、「何とかしてあげたい」という、周りの励ましや行動が、飛び立つための「翼」になるんだ、ということだろう。
今回のパラリンピック開会式には義足モデルとして活動している海音(アマネ)さんも登場していた。彼女は、5歳からキッズモデルとして活躍し、小学4年の時に、ダンススクールの仲間とアイドルグループを結成。ところが、2年後、血管が炎症を起こす難病にかかり、右足が壊死したため、小学6年の7月に足を切断。その後、薬の影響で体重が30キロ以上増えて、「自分は変わってしまった」と感じ、学校に行けなくなり、街を歩くときも、ガン見されることに怯えて、義足をつけていることをばれないようにしていたらしい。
彼女を変えてくれたのは、前回リオ大会の閉会式。そこには、世界的にも有名な義足モデルの方が登場して、きらびやかで堂々と義足で歩く姿に「義足は武器にもなる」と気づかされた。その後、モデルの活動を本格的に始め、その後はアパレルブランドからコマーシャルの声もかかるようになった。
海音さんは「私も義足を出して、同じような境遇の子に勇気をあげたい」と考えた。つまり、彼女は「勇気」という「翼」を送ってくれたのだ。
私たちも、周りの人にどんなサポートができるだろうか、どんな「翼」を送ってあげられるだろうか、少し考えてみないか。周りからのサポートや励ましを必要としている人は必ずいるし、皆さんなら応えてあげられるはず。
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2学期も、生徒の皆さんが充実した日々を送れるよう心から願っています。
あなたを助ける人は必ずいる
先日、オンラインSTをしました。
次の文章は、その際、生徒の皆さんにどうしても伝えたくて送った内容です。
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8月13日の読売新聞に、関ジャニ∞の横山裕さんの話が掲載されていました。
彼が3歳の時に両親が離婚し、5歳の時に新しい父が出来たが、全くなじめなかったこと。小5の頃から、その後生まれた6つ下と8つ下の2人の弟たちや両親と計7人で一緒に貧しい生活をしていたこと。その後、母と義父が離婚し、「僕がしっかりしないと弟たちの将来がむちゃくちゃになる」と考え、2人を支えようと決めたこと。29歳の時、母が急逝し、2人の弟と大阪で共同生活をはじめ、実質、彼が生活費や学費の面倒をみていたこと・・・。などが書かれていました。その横山さんがこう語っています。
ジャニーズ事務所に入ってから、後輩も含めて年齢の近い仲間がどんどんデビューしていきました。自分はいつデビューできるのかという焦りや苦しさがありました。
勉強や進路のことで追い詰められていたら、一度リセットして違うことに切り替えてみるといい。何もやる気が起こらないなら、そういう時期だと思って休んでいい。
僕は中卒なのですが、33歳の時、番組の企画で高等学校卒業認定試験に挑戦。僕なりに猛勉強して合格しました。周囲の応援をプレッシャーに感じたけれど、失敗しても僕一人のせいではないという気持ちもどこかであった。重圧は一人で追わない方がいい。
最後に、若いって、本当にステキなことです。まだ見ていない世界は山ほどあって、何が自分にはまるかはわからない。これから何にだってなれる。自分で選択肢を狭めないでほしい。
親子関係に悩んでいる人は信頼できる誰かに一度、相談してみるといい。悩みを言い出せない気持ちも分かるし、相談しても前に進まなかったらつらい。けれど、一人で抱え込んでいても解決しない。一歩、勇気を出して踏み出してみてください。あなたは一人じゃないのだから。
人間、若い時は、必ず何かしらの重圧がかかってきます。そのプレッシャーが人間を強くさせてくれます。でも「もうムリ、限界だ!」と思う時もある。その時は、誰かにヘルプを求めて下さい。あなたを助ける人は必ずいるから。若い頃、苦労を重ねた関ジャニ∞の横山さんが、自分の経験から「あなた一人じゃない!」と強く言っている、本当にその通りだと思います。
北陵高校の先生方も、あなた達を全力でサポートします。何かあったら遠慮無く相談してほしい。また、顔の知れた先生に相談するのは厳しいというなら、国や県などが開いているSOS相談窓口に、是非声をかけてください。あなたを助ける人は必ずいるから。
勝敗を越えたところ
東京オリンピック開会式が2日後となった。今回はどんな感動を味わえるだろうか。
前回のリオ大会で、自分が一番印象に残っているシーンはバドミントン(女子)ダブルスだ。壮絶な逆転劇で日本選手史上初の金メダルを手にした「タカマツ」ペア。手に汗握る決勝戦自体の感動もさることながら、表彰を終えた「タカマツ」ペアの松友美佐紀さんの言葉にシビれた。試合後、涙を流してインタビューに答える彼女のコメントの一部を紹介する。
「試合をしていく上で、五輪で最後と決めている選手もたくさんいて、それが辛くて、いろいろな選手がいて、いまの自分がいる、もう戦えないと思うと辛かったです。」
「苦しい練習が報われ、世界の頂点に立てて嬉しいです!」みたいな答えをするのかなと思いきや、優勝した松友さんは、相手ともう戦えない寂しさと感謝の念が、私の涙だと言い切った。試合後に、勝敗を越えて、対戦相手に思いを馳せる場面を、私は今まで見たことがなく、本当に驚いた。世界のライバルが自分を成長させてくれたという実感、それが、勝利の喜びよりも、もう試合ができないことへの寂しさを強調させたのだろう。
この夏は、「日本金メダル遂に○個!」とか「日本勝った!負けた!」で全国的に盛り上がると思うが、試合の勝ち負け以外の、様々なドラマや感動も併せて丁寧に見ていって、自分の価値観や見方を広げてほしい。
北陵生諸君も、部活動の大会に出たり、就職選考や大学受験を受けたりと、勝負に挑む機会がやってくる。その時、「勝った!負けた!」とか「受かった!落ちた!」とかのレベルを超越する体験を一度でもいいから持てるといいなと思っている。そうした超越ゾーンに入るということは、そこに至るまでの死に物狂いの努力をし続けていることが前提にあるからだ。
「自分はここまで努力できた。こんなに頑張れた自分を誇りに思うし、自分はメンタルも強い。あとの結果はもう気にならない。試合(受験)を楽しもう。」
大きな勝負を前にして、このようなことを本心から思えるようになってほしい。