校長のつぶやき

2023年3月の記事一覧

ありがとうございました。さようなら。

4月に「こんにちは。新しい校長先生ですか?」と笑顔で生徒に声をかけられた忘れられないあの日からもう1年が過ぎてしまいました。

人は笑顔で挨拶されるだけで、あんなに幸せな気分になれることを知りました。

周りの人を、みんなの笑顔と挨拶と思いやりで、もっともっと幸せにしてあげて下さい。

自分の言動で周りが幸せになると、自分もすごく幸せな気持ちになりますよ。

頑張って坂を登った北陵の丘の上には、笑顔で優しくて思いやりのある生徒や先生がいっぱいいて、「不撓不屈」の精神のもと、いろんなことに挑戦してあきらめずに頑張っている夢のような学校があるよ、という噂が流れるような、そんな素敵な学校にしていって下さい。

今日まで、この「校長のつぶやき」を読んで下さった皆さん、どうもありがとうございました。

拙い文章であり、「つぶやき」といいながら文章は長く、まさに嫌われる校長の典型となるものではありましたが、少しでも私の思いが伝わってもらえたなら幸いです。

これで最後です。

1年という短い間でしたが、金沢北陵高校の校長にさせていただいて本当に私は幸せ者でした。

どうぞこれからも金沢北陵高校を温かく応援していただきますよう、よろしくお願いいたします。

それでは私と関わって下さったすべての皆さんに、本当にどうもありがとうございました。

お元気で。さようなら。

金沢北陵高校の校長として

本校は、来年度創立60周年を迎えます。

昭和38年の創立から3年目の昭和40年に、本校の教育目標の中に「不撓不屈」が追加され、それ以降今日まで、この「不撓不屈」が本校のモットーとして脈々と受け継がれてきました。

金沢北陵高校の一員となったからには、ぜひこのモットーを受け継いでもらいたいという思いで、今日の終業式に、全校生徒に向けてお話しをしました。

その内容を掲載します。

 

3学期 終業式挨拶

皆さん、こんにちは。今日で、令和4年度第3学期が終了します。そして、あと1週間で、令和4年度が終わろうとしています。

3年生が卒業していなくなり、体育館が広く感じられ少し寂しい気もしますが、4月にはここに198名の新入生が加わります。コロナもだいぶ治まり、これまで以上に活気に満ちて充実した学校生活を送っている皆さんの姿を、今からワクワクした気持ちで想像しているところです。

さて、皆さんにとって令和4年度はどのような1年だったでしょうか。今年度自分が一番頑張ったと思えることをあげてみて下さい。部活動、テスト勉強、資格取得、挨拶、ボランティア活動など、他にもいろいろあるかもしれません。何かに頑張ると、必ずそれに対して何らかの結果が出ます。良い結果かも知れないし、悪い結果かも知れません。その結果をどう受け止めて、次にどう活かすかで、その後の生き方が大きく変わっていくように思います。

今年度私は、漢検準1級にチャレンジしました。以前、2回チャレンジして、2回目は結構気合いを入れて勉強したのに、「あと4点で合格です」という結果が届き、本当にショックで、「50歳を過ぎて、目も悪くなって集中力も落ちてきたし、記憶力も悪くなってきたし、もうダメなんや。や~めた。」と、それからは年齢を言い訳にして、何でもすぐにあきらめるというか、チャレンジしようとしない自分がいました。

それが今年度金沢北陵高校の校長となり、いたるところに「不撓不屈」(あきらめないで困難を乗り越えろ)という言葉が掲げられているのを見せられて、あきらめていた漢検にもう一度チャレンジすることを決めました。しかしながら、6月の試験では「あと5点で合格です」、10月の試験では「あと3点で合格です」という結果が届き、さすがに4回も不合格が続くと、心がポキッと折れてしばらく立ち直ることが出来ませんでした。でも、校長室の椅子に座っていると、目の前に「不撓不屈」と書かれた額があるのです。「絶対にあきらめるな」と、私に訴えかけてくるのです。もうやるしかないと心に決め、折れた心を何とかつなぎ合わせて、年末年始の休日は自宅にこもって勉強し、2月の試験を受けて、3月9日に無事合格通知を受け取ることができました。

合格の喜びはもちろんですが、それよりも、これでやっと金沢北陵高校の校長になれた、何とか今年度の間に、本校のモットーである「不撓不屈」を体現することができたということの方が嬉しくて、その日は家でお酒を飲みながら、一人ニヤニヤしていました。

本当にあきらめないで良かった。何度も心は折れかけたけど、まだ自分は頑張れるんだという自信ができて、新しい学びがあって、昨日よりも成長している自分がいて、何よりも単純に嬉しくて・・・。みんなにも、是非この金沢北陵高校の3年間で、何か一つでいいから「不撓不屈」を体現して、私のような気持ちを味わって卒業していってほしいと願っています。

それでは、安全と健康に留意し、有意義な春休みを過ごして、4月の始業式には元気な姿で登校してきてください。終わります。

卒業式

心配していた雨に降られることもなく、春がもうすぐそこまで来ていると感じられるほどの穏やかな暖かさの中、本校第26回目の卒業式を無事終えることが出来ました。

あらためまして、卒業生の皆さん、卒業おめでとう。

保護者の皆様、お子様のご卒業、おめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。

本当に厳かで、素晴らしい卒業式であったと思います。

本日、式に出席できなかった生徒や保護者の皆様に、私のこの1年間の3年生に対する思いを知っていただきたいと思い、ここに式辞を掲載させていただきます。

 

令和4年度 石川県立金沢北陵高等学校第26回卒業証書授与式  校長式辞

本日ここに、ご来賓の方々並びに保護者の皆様方のご臨席を賜り、石川県立金沢北陵高等学校第26回卒業式を挙行できますことは、誠に大きな喜びであります。心より厚く御礼申し上げます。

ただ今、卒業証書を授与しました182名の卒業生の皆さん、卒業おめでとう。皆さんは「不撓不屈」の精神を胸に、夏の暑さや冬の寒さに負けることなく、この標高68.4mの丘の上に立つ金沢北陵高校に通い、W坂やS字坂と呼ばれる急な坂道を3年間登り続けました。年間約200日の授業日があるのですが、3年間で600日、距離にして40000m以上の坂道を登ったことになります。富士山なら10回以上、エベレストなら4回以上登ったことになります。すごいと思いませんか。無理だと思えるようなことでも、一歩一歩着実に前へ進めば、いつか達成することが出来るということを、皆さんは実際に体現したのです。これを大きな自信としてください。本当によく頑張りましたね。

でも、それが出来たのも、皆さん一人一人の努力の成果であると同時に、あなた方を支えてくれたご家族、先生、ご支援をいただいた多くの方々のおかげであるということを忘れてはいけません。感謝の気持ちを持って、今日の卒業式を迎えてもらいたいと思います。

さて、皆さんの高校生活の始まりはといいますと、ちょうど日本国内でコロナ感染が拡大し始めた頃と重なり、入学式の後にすぐ学校が2ヶ月間休校、学校が再開したあとも、コロナの影響でいろいろなことが中止や縮小されました。部活動においても、長い歴史の中で初めてインターハイや夏の甲子園大会、演奏会やコンクールなどが中止となり、皆さんの目標が突然目の前からなくなってしまう状況となりました。全国の多くの高校生が、辛くて、悲しくて、やるせない思いをしたことと思います。

そんな状況の中、歌を通して何か高校生にメッセージを伝えたいということで、「back number」というグループが、「水平線」という曲を発表しました。私も大好きな曲で、特に「正しさを別の正しさで、失くす悲しみにも出会うけれど」というフレーズをよく口ずさみます。目標に向かって、一生懸命に打ち込んできた高校生たちが、大会や発表会で努力の成果を発揮したいという正しさ。それが、コロナウイルス感染が拡大している状況の中で、多くの人が密集するような大会を開くことは出来ないという社会の正しさに潰されてしまったという状況を表しているのだと思います。

私はこの4月から本校の校長になったのですが、このフレーズについて考えさせられることが数多くありました。4月の遠足、6月のほくりんピック、そして、9月の北陵祭、どの行事においても、悪天候や新型コロナウイルスの感染が懸念される中、決行するのか、中止するのか、延期するのか、縮小するのか・・・、最終判断をしなければならないのが、校長である私の責任でした。その時に自然と頭の中に流れてくるのが、先ほどのフレーズだったのです。

これまでつらい思いをしてきた3年生に少しでも多くの思い出を残してあげたいという正しさと、いやいや、生徒の命、健康を守ること以上に大切なことはないという正しさ。どちらも正しいはずですが、最終的には生徒の健康を守ることを第一に考え、ほくりんピックを中止にしたのは断腸の思いでした。

そのようなこともあり、もっと3年生に何かしてあげることができないかと思っていた時に、3年生の生徒会のメンバーが、「ぼくたち、私たちにもう一つ大きな思い出を作らせて下さい」と言って校長室に入ってきたときには、本当に心の底から嬉しかったのを覚えています。生徒会の役員が、一から企画して実行に移してくれた3学年交流会は、学校全体で繋がろう・一緒にがんばろうという気持ちが伝わり、3年生の皆さんも最上級生として盛り上げてくれて、大成功を収めることができましたね。これらのことは、コロナがなければ生まれなかったことかもしれません。ピンチはチャンスに変えることができるということを先輩として後輩たちに示してくれました。どうもありがとう。

皆さんが、高校3年間で多くのことを経験したのと同じように、もしかしたらそれ以上に、これからの皆さんの人生には、いろんなことが起こるかもしれません。うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあるでしょう。当たり前のことが、当たり前でなくなることもあるかもしれません。

お父さん、お母さんをはじめ、先生方、ここにいる人たちも皆、そのような経験をいっぱい積み重ねて大人になってきました。でもね、私は思うのです。このコロナ禍の中で高校3年間を過ごし、今日卒業式を迎えた皆さんは、社会に出た後も、私たち以上に、当たり前の日常に感謝することができて、「ありがとう」という言葉をかみしめながら人に伝えられるようになっているのではないかということを。また、うまくいかないことや辛くて苦しいことがあっても、しっかり前を向いて進み、ピンチをチャンスに変えて、人として大きく成長していくのではないかということを。そんな頼もしい皆さんに、いつかどこかで出会える日を楽しみにしています。

話が長くなってきました。4月の始業式の挨拶の中で、話の長い校長は嫌われるという話をしたら、皆さんは笑顔で大きくうなずいていましたね。伝えたいことはまだまだありますが、この辺にしておきたいと思います。

保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。今日のお子様の晴れ姿に、感激もひとしおのことと存じます。誕生から今日の日を迎えるまで、きっといろいろなご苦労があったと思いますが、皆さんが大きな愛情と責任を持って、今目の前にいるお子様を今日までしっかりと育ててこられたことは間違いのない事実であります。そんな自分を今日は自分で褒めてあげていただきたいと思います。

今日のご卒業をお慶び申し上げますとともに、これまで私どもが賜りましたご理解とご協力に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。

最後に、もう一度、卒業生の皆さん、本日、本校同窓会様のご厚意により、皆さん一人一人に、旅立ちを祝う花、エアリーフローラが届いています。花言葉は「希望」。まさに希望に満ちてこの金沢北陵高等学校を巣立っていく皆さんの前途に幸多からんことを心よりお祈りし、式辞といたします。

令和5年3月1日

石川県立金沢北陵高等学校長  高倉 英明