校長室より「おこらいえ」

被災地に寄せて

地震から 536 日目

豪雨から 272 日目

 

「ふるさと企業を知る会」

ビジネスコースの23年生を対象に

実施されました

 

 

 

 

 

 

輪島市内の企業様9社にお越しいただいて

お話をしていただきました

 

 

 

 

 

 


さて

今年は新規採用の先生方が

5名も本校に配属されました

 

昨年

今年よりもっと悲惨な状況で

赴任した先生がふたり

 

そのうち商業科の木村先生が

手記を投稿されました

一部抜粋して紹介します

 

「教師になって1年が経ちました

 生徒にどのように成長してほしいのだろう

 と自分自身の価値観について自問自答する日々でした

 そんな中生徒から

 「商業科目は社会で使うのか」と言われました

 もちろん使いますが

 あえて「使わない」と返答しました 

 ただ

 「商業科目を学ぶ過程で身につく能力は

 これから人生で大いに役立つ」と

 自分の経験から返答しました

 その時はっきりと気づきました

 生徒には

 商業の知識そのものではなく

 学ぶ過程で養われる能力を身につけてほしいのだと

 

 初任校は輪島高校でした

 輪島に向かう道中は

 地震の影響で亀裂や段差がたくさんあり

 慎重に運転しても危険を感じるものでした

 輪島に入ると

 崩壊した山や倒壊した家屋の光景が

 目に飛び込んできました

 この環境の中で教師として働くことができるのか

 不安でいっぱいになりました

 しかしその不安も

 輪島の生徒たちの笑顔や

 真剣な眼差しに触れるうちに

 次第に和らいでいきました

 そして気づけば

 不安よりも

 どうすれば生徒たちの力になれるか

 を考えるようになっていました

 

 この1年間で

 私の中の価値観が大きく変わりました

 教育に対する考え方

 授業の進め方

 生徒への指導の方法など

 どれもが悩みと向き合い

 試行錯誤を重ねる中で

 少しずつ変化してきたものです

 その中でも最も大きく変わったのは

 被災地に対するイメージでした

 暗くて重いイメージを勝手に作っていましたが

 そんな事はありませんでした

 元気に溢れ

 賑やかで

 時に騒がしい

 そして輪島の未来を誰よりも真剣に考えている人たちが

 力強く生きている場所でした

 この環境で

 そんな彼らと日々を共にする中で

 この学校に配属されたことを

 嬉しく思うようになりました

 まさか私が

 こんなことを思うなんて」

タイムリミットあと2日

地震から 535 日目

豪雨から 271 日目

 

北信越大会に出場する陸上部

やり投げの紺谷優衣菜さん

砲丸上げの大久保侑さんに

激励会を行い

校長会と同窓会からの

激励金を手渡しました

 

 

 

 

 

 

 紺谷さんは

「予選突破してベスト8に入る!」

大久保さんは

「輪島新記録を更新する!」

と力強い抱負を語ってくれました


自分のことは自分でする

そのことを生徒に教える教員も

自分達の場所は自分達で掃除

あたりまえのことを愚直に行っています

水曜日のトイレ掃除は校長の仕事

ピカピカに磨き上げてきました

 

 

 

 

 

 

若い頃

当時の校長先生といっしょに

素手で便器に手を突っ込んで掃除したことを

思い出します

まるで明治大学野球部の島岡監督

調べてみると

今でも明治大学野球部の伝統として

受け継がれているそうですね

さすがに素手でということはないと思いますが

 

思えば2年前の大晦日

誰もいない校舎で

便器の中に手を突っ込んで

尿石を削り落とし

ワックスまでかけて

ぴかぴかにした翌日

地震に襲われたのでした

せっかく綺麗にしたのに・・・

と悔しがったのを思い出します


その思い出のトイレ掃除の翌日

焼き尽くされた朝市界隈の片隅に

ポツンと1軒燃え残った我が家

(実際にはもう1軒ありますが)

 

 

 

 

 

 

割れたガラスや瓦

崩れた壁や天井が痛々しいまま

1年半雨ざらしになっていましたが

いよいよ20日に公費解体が始まります

 

なんとか震災遺構として残せないか

新しい朝市の入口となるこの場所で

この震災を後世に伝える施設にできないか

中に展示室やセミナー室を設けて

修学旅行生などに防災教育を施す

拠点として再生できないか

そう考えて

「大改造!劇的ビフォーアフター」に

申し込んで返事を待っています

タイムリミットはあと2日

あさってまでにオファーがあれば

公費解体を中止するつもりでいるのですが

ここまで返事がないところを見ると

この家の姿を見るのも

あと2日になりそうです

 

最後に潜り込んで

大事なものがないか

見て来ようと思います

 

有無を言わさず全てを奪われた

お隣さんに比べると

お別れを言えるだけしあわせです

非凡?平凡?役不足?

地震から 534  日目

豪雨から 270 日目

 

詩人の 里みちこ さまから

被災地に心を寄せた詩をしたためた

「詩作品」をいただきました

 

(1)希望

  捨てられるはずのアイスの棒でこしらえました

 

  

 

 

 

 

(2)アイン スタイン(ein stein)

  曽々木海岸に打ち上げられた

  玉石を使いました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(3)ありがとう ごめんなさい

  団扇を使った「詩作品」です

 

 

 

 

 

 


昨日のブログを読み返してみて

語句の誤用をしているのを見つけました

「非凡」です

たいした能力のないこと

の意味で使ったつもりだったのですが

「凡」に非らずだから

全く逆の意味でしたね

 

この他にも言葉使いの間違いをして

恥ずかしい思いをしたことが多々あります

 

まずは「役不足」

「私には役不足です」

謙遜の意味で使ったりしていました

でもよく見てみると

不足しているのは「役」の方なので

「立派な儂にこんな簡単な仕事なんかさせるな」

という尊大な意味になってしまうのですね

 

「綺羅星の如く」

(きらぼしのごとく)と読んでいましたが

(きら・ほしのごとく)なんだそうですね

 

「間髪を入れず」これも

(かんぱつをいれず)ではなく

(かん・はつをいれず)です

 

日本語って面白いですね

 

「フラダンス」も本当は奇妙な言葉です

「フラ」自体がダンスの意味なので

日本語にすると「踊り踊り」になります

「チゲ鍋」も「鍋鍋」

「サハラ砂漠」も「砂漠砂漠」です 

職員室変えちゃって委員会

地震から 533 日目

豪雨から 269 日目

 

ポルトガルのスクールクラスターを

視察して驚いたこと

職員室に対する考え方です

 

職員室は職員の休憩場所

これが徹底されています

置いてあるのは

バーカウンターと

エスプレッソマシン

そしてソファー

 

授業から帰ってきた教員が

エスプレッソを飲みながら

子どもたちの授業の様子について

情報交換をします

 

考えてみたらそうですよね

教員の仕事場は

教室であり体育館であるはずで

 

日本のように

授業以外の文書作成に追われ

教員が黙ってパソコンに向かっている

職員室は

彼らにとっては異様な光景として

目に映ることでしょう

 

さて本校では仮設校舎の建設が始まりました

グラウンドの片隅に

とは言っても3分の1ほど

ドスンと鎮座ましまする

 

秋頃から運用が始まりその後

本校舎のジャッキアップ作業が始まります

あんな大きなものを

ジャッキアップするなんて

驚くべき技術です

 

仮設校舎が完成すると

引っ越しとなるわけですが

職員室には

あの大きくて重い灰色のデスクを

全員分運び込む必要が生じます

業者がそこまでやってくれるはずもなく

限られた教員で運ぶとなると

負担が大きく

とすれば生徒のみんなに

手伝ってもらう必要が生じます

 

私が若い頃教えていただいた

先輩の先生からの言葉で

心に残っているもののひとつに

こんなのがあります

「生徒にものを頼むことを

 躊躇しなくなったら

 教員としてはおしまいだ」

ずっとこの言葉は心に残っていて

管理職になって赴任した学校では

職員室と職員トイレの

生徒による掃除を

ことごとく廃止してきました

 

自分のことは自分で責任持ってやる

そのことを教えるべき教員が

自分の場所を生徒に掃除させることは

もってのほかだという思いからです

 

というわけで

仮設校舎に職員用の従来の机を運ぶことをやめ

これを機に

職員室のフリーアドレス化を

一気に推し進めようと画策しています 

 

教員が毎日同じ場所に座るから

そこには書類が山積みになってきて

毎朝出勤するたびに

その書類の山を目にして

やる気が失せ

そんな悪循環を断ち切りましょう

 

ただ中には

書類をサグラダファミリアのように

芸術的に堆く積み上げ

「先生あの書類どこですか?」

と尋ねると

「確かこの辺に」

とか言って一発で探し当て

しかもその書類の山が

地震でも微動だにしなかったという

驚くべき耐震構造を備えている

こんな先生もいらっしゃいました

 

このような名人級の先生はさておいて

非凡な教員は日々の整頓が大切です 

 

そんな訳で

「職員室こんなに変えちゃって委員会」

再結成です

教員一人ひとりが働きやすく

しかも生徒も訪れやすい

そんな職員室を目指してのプロジェクトです

 

再結成というのは

すでに一度立ち上げたことがあった委員会だから

 

あれは6年前

私が教頭時代の頃の話です

 

その時は

これまでのやり方をかえることをよしとしない

一部の先生の抵抗に遭い

名前の割にさほど変わらなかったのですが

今はまずはやってみようという

考えの先生が増えてきているはずなので

ある程度前へ進むことができると思われます

教育の万博

地震から 532 日目

豪雨から 268 日目

 

この土日を利用して

NEW EDUCATION EXPO 2025 

いわば教育の万博に

大阪まで来ています

 

 

 

 

 

 

大阪の先生はちょっと出かけると

こういった機会に恵まれているのに

我々地方の人間にとっては

何万円という大枚を叩かないといけないので

こういったところにも

教育格差を感じます

 

とはいえ

自腹を切った研修は

それだけ貪欲に学ぼうという気になります

 

教育の第一人者である

鈴木寛先生のお話を聴くことができました

 

現在輪島高校も連携させていただいているOECD

そこが主催していて今年本校も参加予定の

学力検査PISA

前回の調査結果を踏まえ

現在実施されている教育施策について

お話ししていただきました

 

日本の子どもは学力が世界一なのに

ウェルビーイングが37位と

参加国中最低レベル

つまり幸福度が低い

 

詳しく分析してみると

学校生活には9割の子どもが満足しているけど

家庭からのサポートへの満足度が

世界最低なのだそうです

 

このことは家庭だけでなく

会社 社会 地域全体で取り組むべき課題です

 

まずは輪島高校ではこうしましょう

お子さんのいる教員は

最低週一回は定時に帰る

そしてお子さんと一緒に夕食を食べる

なんでもない一緒にいる時間を作る

 

それから

自分で学習する自信のない子どもが6割と

これまた世界最低

学習内容よりも学習のしかたを教える必要があります

中間テストを廃止して取り入れた

本校の「学びウイーク」の理念と一致します

期間中の行事をこなすだけでなく

どう学びに結びつけていくかを

追求する必要があります

 

教科書の内容が50年前の3倍と

カリキュラムオーバーロードの問題もあります

授業時間内で内容全てを教えることに無理があり

勉強のしかたを教えることの重要性が

ますます重要になっています

 

最近は通信制高校が

それも通学制の通信高校が人気だそうです

従来の通信制は

大勢の中にいるのが苦手な子

ひとりで学習したい子の受け皿だったのですが

今通学制の通信高校に通っている生徒が求めるのは

友達との協働学習なんだそうです

さらに学校の授業についていけない生徒は少なく

むしろずば抜けて優秀な生徒が増えてきています

このことは教科の内容を教えるのはAIで十分

たまに学校に来て

既習内容を協働学習によってさらに深める

そんな未来の学校の姿が見えてきます

何も月曜日から金曜日

週に5日も学校に来る必要などない

ということです

 

個々の生徒の認知特性にも配慮した

公正な個別最適化を意識した教材の提示も

工夫していく必要があります

ある調査によると

日本人成人における認知特性は

 聴覚優位 67.4 %

 視覚優位 13.4 %

 身体優位 17.2 % だそうです

これはほとんどの人において

耳から入る情報が

頭に入りやすく残りやすいことを

示しています

 

しかしながらこれまでの教育で行われてきた

教科書と板書中心の授業は視覚中心です

勉強が苦手と感じている人は

勉強ができないのではなくて

これまでの学校教育における 

インプットのさせかたに

問題があったということなのです

 

先生の話を聴くのに集中するのに

視覚情報を遮断するために

目を閉じて聴いていて

寝るなと叱られる理不尽な経験のある方

いるんじゃないでしょうか

ある建設業界では

視覚情報中心のマニュアルをやめたところ

驚くほど作業パフォーマンスが上がったそうです

 

教科の見直しも求められます

ある進学校に勤めていたころ

英数国は主要教科

その他は枝葉末節の枝葉教科

などと言われましたが

これからの主要教科は家庭科と保健体育です

家庭と体育は

教科横断型の合同科学の宝庫です

 料理はまさに化学だし

 食材の産地は地理

 運動力学は物理だし

 スコア分析は統計学

 

今多くの教員がイメージしている

「知識を身につけてから

 それを活用して探究活動を行う」

からの脱却が求められます

 

今後は部活動型の探究活動が求められるでしょう

送りバントが完璧にできるようになってから

練習試合に出すのではなく

練習試合で失敗させて

送りバントの練習の重要性を身をもって知る

自分が好きなことをとことん突き詰める中で

それに必要な知識を身につける

というスタイルです

 

そのためには

劇的変化を遂げている

教育AIの効果的な活用も

大きなポイントとなります

 

例えばテストの問題を作成する際に

問題集の問題文を読み込ませておいて

「〇〇な出題方法に書き換えて」

とお願いするだけで

オリジナル問題を作成することができます

これまで莫大な時間を要していた

テスト問題づくりの時間を

劇的に削減することができます

 

このことで捻出できた時間を

生徒に寄り添う時間に費やすことができます

AIがどんなに進化しても

教員にはなれないといいます

教員の最も大切な仕事は

「寄り添う」ことと

「勇気づける」ことだからだそうです

 

今回の震災で

私は痛いほどそのことを実感しました

「学校にどんな支援が必要か?」

と尋ねられた時に迷わず

「授業をしてくれ」

とお願いしました

被災地の教員にしかできない仕事は

「寄り添う」ことと

「勇気づける」ことだからです

このことを私は

一言も口にしたことはありませんでしたが

先生方一人ひとりが

実践してくださっていました