校長のつぶやき

校長のつぶやき

先の見えない戦場

先日の朝日新聞に、金沢市保健所を密着取材したリポートが掲載されていた。

現在の保健所の1日は、「職場には電話するな!」と迫る人、「何時になったら入院できるんだ!」とすごむ人、発症日までの行動を正直に話さない人、「保健所は見殺しにする気か!」と怒鳴る人、鳴り止まない電話の対応に明け暮れている。帰宅は連日深夜。睡眠は4.5時間。めまいや吐き気が続き、休養する人も出ている。毎金曜の昼には「カレー」がふるまわれる。曜日感覚を忘れないようにするためだ。

職員の「何時になったら終わるのか、先の見えない戦場です」という言葉に胸が詰まる。

2学期に入り、生徒諸君には「感染拡大防止で、今、あなたが出来ることを丁寧に」と言い続けているが、しんどい時には、限界で業務に当たっている保健所の方々を思いやってみよう。

 

 

私たちには翼がある

本日の始業式で、生徒の皆さんに次のような話をしました。

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8月24日、東京パラリンピック開会式でのパフォーマンスが印象に残っている。

国立競技場を空港の滑走路に見立てて、そこから飛び立とうとしている小さな飛行機。13歳の車椅子の少女がその飛行機を演じている。でも、翼が片方しかない。でも、一生懸命飛び立とうとしている。そこに、個性的な様々な乗り物が集まって、その仲間達からの励ましで、片翼の飛行機は空に飛びたつ、というストーリー。

そのタイトルは 「We Have Wings(私たちには翼がある)」。大会公式ツイッターによると、人間は誰もが、自分の「翼」を持ち、勇気を出して、その「翼」を広げることで、自分の夢に到達できることを、テーマにしたようだ。

実際、日常生活に困難を抱えている方々はいらっしゃる。目に見える障害でなくでも、私たちにも「心の翼」が少々もぎ取られてしまったような苦しみを抱えている人たちはいる。そうした人達に対して、「何とかしてあげたい」という、周りの励ましや行動が、飛び立つための「翼」になるんだ、ということだろう。

 今回のパラリンピック開会式には義足モデルとして活動している海音(アマネ)さんも登場していた。彼女は、5歳からキッズモデルとして活躍し、小学4年の時に、ダンススクールの仲間とアイドルグループを結成。ところが、2年後、血管が炎症を起こす難病にかかり、右足が壊死したため、小学6年の7月に足を切断。その後、薬の影響で体重が30キロ以上増えて、「自分は変わってしまった」と感じ、学校に行けなくなり、街を歩くときも、ガン見されることに怯えて、義足をつけていることをばれないようにしていたらしい。

 彼女を変えてくれたのは、前回リオ大会の閉会式。そこには、世界的にも有名な義足モデルの方が登場して、きらびやかで堂々と義足で歩く姿に「義足は武器にもなる」と気づかされた。その後、モデルの活動を本格的に始め、その後はアパレルブランドからコマーシャルの声もかかるようになった。

海音さんは「私も義足を出して、同じような境遇の子に勇気をあげたい」と考えた。つまり、彼女は「勇気」という「翼」を送ってくれたのだ。

私たちも、周りの人にどんなサポートができるだろうか、どんな「翼」を送ってあげられるだろうか、少し考えてみないか。周りからのサポートや励ましを必要としている人は必ずいるし、皆さんなら応えてあげられるはず。

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2学期も、生徒の皆さんが充実した日々を送れるよう心から願っています。

 

あなたを助ける人は必ずいる

先日、オンラインSTをしました。

次の文章は、その際、生徒の皆さんにどうしても伝えたくて送った内容です。

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8月13日の読売新聞に、関ジャニ∞の横山裕さんの話が掲載されていました。

彼が3歳の時に両親が離婚し、5歳の時に新しい父が出来たが、全くなじめなかったこと。小5の頃から、その後生まれた6つ下と8つ下の2人の弟たちや両親と計7人で一緒に貧しい生活をしていたこと。その後、母と義父が離婚し、「僕がしっかりしないと弟たちの将来がむちゃくちゃになる」と考え、2人を支えようと決めたこと。29歳の時、母が急逝し、2人の弟と大阪で共同生活をはじめ、実質、彼が生活費や学費の面倒をみていたこと・・・。などが書かれていました。その横山さんがこう語っています。

 

ジャニーズ事務所に入ってから、後輩も含めて年齢の近い仲間がどんどんデビューしていきました。自分はいつデビューできるのかという焦りや苦しさがありました。

勉強や進路のことで追い詰められていたら、一度リセットして違うことに切り替えてみるといい。何もやる気が起こらないなら、そういう時期だと思って休んでいい。

僕は中卒なのですが、33歳の時、番組の企画で高等学校卒業認定試験に挑戦。僕なりに猛勉強して合格しました。周囲の応援をプレッシャーに感じたけれど、失敗しても僕一人のせいではないという気持ちもどこかであった。重圧は一人で追わない方がいい。

最後に、若いって、本当にステキなことです。まだ見ていない世界は山ほどあって、何が自分にはまるかはわからない。これから何にだってなれる。自分で選択肢を狭めないでほしい。

親子関係に悩んでいる人は信頼できる誰かに一度、相談してみるといい。悩みを言い出せない気持ちも分かるし、相談しても前に進まなかったらつらい。けれど、一人で抱え込んでいても解決しない。一歩、勇気を出して踏み出してみてください。あなたは一人じゃないのだから。

 

人間、若い時は、必ず何かしらの重圧がかかってきます。そのプレッシャーが人間を強くさせてくれます。でも「もうムリ、限界だ!」と思う時もある。その時は、誰かにヘルプを求めて下さい。あなたを助ける人は必ずいるから。若い頃、苦労を重ねた関ジャニ∞の横山さんが、自分の経験から「あなた一人じゃない!」と強く言っている、本当にその通りだと思います。

北陵高校の先生方も、あなた達を全力でサポートします。何かあったら遠慮無く相談してほしい。また、顔の知れた先生に相談するのは厳しいというなら、国や県などが開いているSOS相談窓口に、是非声をかけてください。あなたを助ける人は必ずいるから。

 

勝敗を越えたところ

東京オリンピック開会式が2日後となった。今回はどんな感動を味わえるだろうか。

前回のリオ大会で、自分が一番印象に残っているシーンはバドミントン(女子)ダブルスだ。壮絶な逆転劇で日本選手史上初の金メダルを手にした「タカマツ」ペア。手に汗握る決勝戦自体の感動もさることながら、表彰を終えた「タカマツ」ペアの松友美佐紀さんの言葉にシビれた。試合後、涙を流してインタビューに答える彼女のコメントの一部を紹介する。

 「試合をしていく上で、五輪で最後と決めている選手もたくさんいて、それが辛くて、いろいろな選手がいて、いまの自分がいる、もう戦えないと思うと辛かったです。」

 「苦しい練習が報われ、世界の頂点に立てて嬉しいです!」みたいな答えをするのかなと思いきや、優勝した松友さんは、相手ともう戦えない寂しさと感謝の念が、私の涙だと言い切った。試合後に、勝敗を越えて、対戦相手に思いを馳せる場面を、私は今まで見たことがなく、本当に驚いた。世界のライバルが自分を成長させてくれたという実感、それが、勝利の喜びよりも、もう試合ができないことへの寂しさを強調させたのだろう。

この夏は、「日本金メダル遂に○個!」とか「日本勝った!負けた!」で全国的に盛り上がると思うが、試合の勝ち負け以外の、様々なドラマや感動も併せて丁寧に見ていって、自分の価値観や見方を広げてほしい。

 北陵生諸君も、部活動の大会に出たり、就職選考や大学受験を受けたりと、勝負に挑む機会がやってくる。その時、「勝った!負けた!」とか「受かった!落ちた!」とかのレベルを超越する体験を一度でもいいから持てるといいなと思っている。そうした超越ゾーンに入るということは、そこに至るまでの死に物狂いの努力をし続けていることが前提にあるからだ。

 「自分はここまで努力できた。こんなに頑張れた自分を誇りに思うし、自分はメンタルも強い。あとの結果はもう気にならない。試合(受験)を楽しもう。」

 大きな勝負を前にして、このようなことを本心から思えるようになってほしい。

運を引き寄せる

*終業式でお話しした内容のダイジェストです。

 大リーグで大谷選手が活躍しています。オールスター戦でもホームラン競争、そして先発ピッチャーと一番バッターの二刀流で出場し、活躍しました。自分もテレビで少しだけ見ましたが、凄く印象に残った場面があります。それは、試合で特大ホームラン打ったシーンでも、バッタバッタ三振をとったシーンでもありません。

 オールスター戦の直前、練習が終わり、ブルペンからベンチへ戻る途中、大谷選手は、外野の芝生付近に落ちていた“ゴミ”をさりげなく拾って、尻のポケットにしまったんですね。2秒くらいのほんのわずかな時間でしたが、ゴミを当たり前のように拾ったその場面が頭に焼き付いています。調べてみると、彼は公式戦でも、グランドにゴミが落ちていたら当たり前に拾って、ポケットに入れていたようです。なぜ、そんなことをさりげなくできるのか?

 それは高校時代、野球部の監督から学んだことの1つが、このゴミ拾いの大切さだったということです。

 「ゴミは人が落とした運。ゴミを拾うことで運を拾うんだ。そして自分自身にツキを呼ぶ。そういう発想をしなさい。」

 そう言われ続けた大谷選手は、高校時代に作成した目標達成シートの「運」の項目に「ゴミ拾い」を挙げ、それが習慣になり、メジャー公式戦でも続いているということなんです。

  運がいいとか悪いとか言いますが、「運」は自分の手で引き寄せるもの、待っていても何も変わらない。目に見えないだけで、実は転がっている「運」を、自分の力で引き寄せことが必要です。でも、そのためにはどうすればいいのか。

 それは、回りの人から感謝されるような行動を続けることだと考えます。「ゴミを拾った」「ニコッと笑って挨拶をした」「お年寄りに席を譲った」「家の手伝いをした」等、さりげないちっぽけなことでいいんです。大谷選手のように、それを繰り返して、習慣にしてしまえば、自分で運を引き寄せられると思います。

 昨日の業後、今夏ボランティア活動を行う「サマーボランティア説明会」が開催され、多くの北陵生が参加していました。彼らにとって、幸運を引き寄せる1歩になることを期待しています。