日誌

2021年8月の記事一覧

日本人の中に生きる『名こそ惜しけれ』 、 『三方良し』の道徳観

夏休みが終わりました。この夏休み期間中の7月23日~8月8日にはオリンピックが開催され、8月24日からはパラリンピックが始まりました(パラリンピックの閉会式は9月5日です)。オリンピック・パラリンピックの開催については、地球規模のコロナ禍であり、いまだに開催の是非が国内外で議論されてはいます。しかし、競技にひたむきに取り組む選手の姿には心を打たれます。毎日のようにテレビに向い、声援を送っていた人も多いことでしょう。また、今大会では、サポートボランティアにも注目が集まりました。ジャマイカ代表で110mハードルの金メダリストであるハンスル・パーチメント選手を助けたストイコビッチ河島ティヤナさんが一番の例ですが、それ以外でも大会を支えるボランティアの働きぶりの素晴らしさが数多く報道されています。

蘊蓄(うんちく)を傾ければ、オリンピック運営におけるボランティアの参加は1948年のロンドン大会(イギリス)からです。当時は軍人やボーイスカウトが動員されていたようです。そして、「オリンピックボランティア」が定義され、広く一般民衆から募集されるようになったのが1992年のバルセロナ大会(スペイン)からであり、以後、“ボランティアの活躍こそが大会を成功に導く”とまで言われるほど、オリンピック・パラリンピックにはボランティアが欠かせない存在となりました。

2020東京オリンピックが成功だったかと問われれば、コロナ禍の中での開催ということで、その返答は、立場や考え方によって、違ってくるでしょう。しかし、選手にとってはかけがえのない大会であり、結果はともあれ国の代表として競技することが出来たという誇りは一生モノです。そして、自分たちを歓迎し、「おもてなし」の精神で大会を運営してくれた日本及び支えてくれたボランティアスタッフに感謝の気持ちをもってもらえたなら、選手たちにとって、このオリンピックは成功といえるのではないでしょうか。

(日本贔屓の見方も多分に含まれますが、)今回の2020東京オリンピックだけだはなく、2019年のラグビーワールドカップ日本大会、古くは2002年サッカーワールドカップ日韓大会…、その他、様々な国際的イベントが日本で行われてきましたが、その都度、日本の運営スタッフやボランティアは世界各国の人々から称賛されてきました。日本で開催されるなら安心だと思われてきました。それはなぜなのでしょうか?日本人という民族を研究する国内・海外の学者は、日本人が秘める特異な精神性について指摘します。そして、日本人の精神の中には、平安時代中期以降に現れた武士が農民やその他の身分の者から信頼を得るために築いていった“精神的美学”が現代にも残っていると言います。中でも、鎌倉時代の板東武者から起こり、武士の世界で引き継がれ現在に至る『名こそ惜しけれ』の精神や、明治から昭和期に活躍した歴史学者であり法学者でもある廣池千九郎(ひろいけちくろう)の『三方良し(さんぼうよし)』の考え方が日本人の持つ道徳性に根強く残っていることに言及します。

『名こそ惜しけれ(なこそおしけれ)』

 「名」は自分自身の存在や生き様を意味する

 鎌倉武士(板東武者)を象徴する言葉

人、ご先祖様、自分に対して「恥ずかしいことをするな」という意味。江戸時代までは武士の美学であったが、明治に入り武士階級が消滅すると、国民全体に武士社会の精神が広まる。

 ・勤勉で礼儀を重んじる

 ・公のために自分を律する

 ・恥ずかしい仕事は出来ない → 職人気質

 ・お天道様が見ている(悪いことは出来ない)

『三方よし(さんぼうよし)』

 廣池千九郎の道徳経済一体思想の中心的考え

「自分よし」「相手よし」「第三者よし」

自分・相手・第三者の三方にとっての利益を考えて行動することが大切という意味。 後に近江商人の経営理念にも引用されるようになる。

 廣池千九郎(ひろいけちくろう)

   1866年 現在の大分県中津市で出生

   小学校教員から歴史学者、法学者、宗教家としても活動

先述した、ティヤナさんもパーチメント選手の状況に立って何をしてほしいかを考え、サポートスタッフとしての役割に徹したことが、金メダルという、パーチメント選手にとってもジャマイカという国にとっても最高の結果をもたらしたことになります。これからの社会を生きる子どもたちには、2020東京大会を支えたボランティアスタッフの方々のように、「自分自身がよく考えた上での行動」を誠実に追求することができる資質を備える必要があります。鳳至小学校としては、2学期も、子ども自身が「考える」ということを重視して教育活動を組み立てていきます。そして、ここで肝要なことが、子ども達に「考える」ことが楽しいと思わせること、粘り強く考えること、考えることで困難を克服出来たという経験や積ませることです。そして、その学習や活動のようすを保護者や地域の皆さんに評価してもらうことで、子どもたちは自信を深めたり、反省してより良い学びに改善したりすることができます。

 コロナの影響で学校に足を運ぶことをためらわれている方も多いことと思いますが、マスクを着用することと消毒することをお守りいただき、子どもたちの活動の様子をご覧になっていただければと思います。ご理解とご協力をよろしくお願いします。

        学校長   山 岸  茂 樹

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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